億万長者たちの多くは結婚している。独身は少ない。というか結婚して良き伴侶を得たことで億万長者になれた、と言い切る大金持ちがほとんどなのだ。
アメリカの資産家研究の第一人者トマス・J・スタンリー博士は、その著書『なぜ、この人たちはお金持ちになったのか』の中で、「この5つがなければお金持ちになれない」という条件のうちの一つが「結婚」である、と述べている。
スタンリー博士はニューヨーク州立大学教授で、ほかに『となりの億万長者』『女性ミリオネアが教えるお金と人生の法則』など、お金持ち研究に関する著書を多数書いている。そんなスタンリー博士が掲げている「億万長者の必須条件ベスト5」をここで紹介しよう。
■誠実~誰に対しても正直であること
■自己鍛錬~自分で自分をコントロールすること
■社会性~人とうまくやっていくこと
■配偶者の支えがあること
■勤勉~ふつうの人より一生懸命に働くこと
これはアメリカ人を調査したものなのだが、億万長者というイメージからはかなり遠く、何とも地味であり平凡で、面白みのない指摘かもしれない。しかし、じつは私はこのスタンリー博士の分析にまったく同感なのである。小金持ちや相続による土地成金は別として、この5要素を欠いた資産家に出会ったことがないのだ。
さらに億万長者たちからのヒアリングで、意外なほどに質素な大金持ちの実態が明らかになった。億万長者たちが配偶者となる人に最初に出会ったときに心を惹かれた資質の上位5つは「知性的で、誠実で、明るく、信頼でき、情愛豊かなところ」だというのだ(実に当たり前のことばかり)。
将来億万長者になる人たちの良き伴侶選びにおいては、お金や経済力は優先事項ではなかったということは意外だが、じつは女性が男性を選ぶときには、これら5つの要素に加えてプラスアルファがあった。さすがに女性は、男性の金銭力をまったく度外視していたわけではない。
結婚後に億万長者となった男性の妻たちが、先に挙げた5つの資質のほかに惹きつけられたプラスアルファとは、その男性が持つ「野心的でしかも高収入を得る能力」だった。女性たちは、パートナーの男性の将来的な潜在能力や可能性をチェックしていたのである。また5人のうち4人の女性が、「相手が結婚前から裕福であるかどうか」は重要なポイントではなかったと答えているのだ。
億万長者の妻たちは若い頃、夫の収入が低いからといって離婚しようなどとは夢にも思わないし、良いときも悪いときも、たとえわずかな収入しかなくても、夫婦で頑張ってきたからこそ億万長者になれたのだと、スタンリー博士は紹介している。
また、もし経済力という観点から結婚相手を選ぶなら、「資産」を取るのか「収入」を取るのか、選択肢は2つに1つしかないとのスタンリー博士の指摘も、とても示唆に富むものである。資産運用を考えたことのない若い人にはピンとこない表現かもしれないが、「将来のストック」と「現在のフロー」は似て非なるものだということを、人間はたくさんの失敗を重ねてやっと気がつくのだった。