新型コロナウイルス感染症が第5類に移行して、半年以上が経過した。働き方にも変化が出ている。外資系企業を中心に年間1000人以上の社員と面談を行う産業医の武神健之さんは「新型コロナに関するさまざまな制限が解除された頃から、50代の社員たちから共通した悩みを相談されることが増えた」という――。
ビジネス街の通りに立つ中年ビジネスマンの後ろ姿
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コロナ後に増えた50代社員からの相談

こんにちは。産業医の武神です。今年も1000件以上の働く人たちとの面談をしています。

いろいろな相談がありますが、新型コロナ感染症に関連するさまざまな制限が明けたころより、50代の社員たちから共通する悩みの相談が増えてきました。今回は、その相談内容についてお話ししたいと思います。

50代半ばの男性社員Aさんが産業医面談にいらしたのは、新型コロナ感染症が第5類に移行した頃でした。Aさんは、部下の面倒見がいいハイパフォーマーと人事部の中でも評判の方でした。

私も産業医として、過去に何度か部下のことについて上司のAさんと面談をしていたので、特に部下のことがないのに面談に来られたのでどうしたのだろうと聞いてみると、「最近仕事で疲れることが多くなってきた。以前ほどアグレッシブに働けていない自分がいる」とのことでした。

疲労が抜けにくく、前向きな気持ちになれない

詳しく聞いてみると、夜にオンライン会議があった翌日の疲労が以前よりも抜けなく蓄積してきていること、定期的に通う整体では上半身全体のコリが特にひどくなっていると言われたこと、以前ほど仕事を前向きに考えたり楽しく思っていない自分がいることを教えてくれました。一方、睡眠や食事はしっかりととれており、週末のジムも継続しており、メンタルヘルス不調を強く疑う症状はありませんでした。また、特に業務上のパフォーマンスが低下している等の指摘はないとのことでした。

部下の育成や労働条件の改善については、以前同様、しっかりとやっている。ハードに働く部下たちには少しでも報われてほしいし、そうでないと転職してしまうだろうからともおっしゃる姿は、以前のAさんと同じ印象でした。しかし、ご自身のことになると以前ほど積極的に働く気持ちになれないとのことでした。