無意識の偏見に左右されず、自分らしく生きるにはどうすればいいか。ハーバード大学に務める小児精神科医の内田舞さんは「社会の中にある無意識の偏見から生まれる『有害な男らしさ』は、周囲の人たちにとって脅威であり、それ以上に男性自身をも苦しませる。これらにより取ってしまう行動が孤独を助長し、抱えている問題の本質からもそれるリスクがある」という――。

※本稿は、内田舞『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

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メンタルヘルスと「孤独」の関係について

「孤独」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか。どちらかというとマイナスイメージが強いのではないでしょうか。

確かに社会的なつながりがあることは私たちの心身の健康にとって重要であることは明らかで、孤独は有害という見方があります。2週間以上の長期的な社会的孤立は、高血圧、うつ病、心疾患、脳卒中、アルツハイマー病などのリスクを高くすると言われたりもします。

また、孤独感が強い人ほど体内での炎症反応が起こるリスクが高いといった研究報告もあります。

コロナパンデミック下での隔離や行動制限が人々に大きな不安やストレスを与えたことは記憶に新しいと思います。この期間に気分障害が増えたという報告もあり、社会的な交流が減ってしまうと精神疾患の発症にも影響を与えることが推測されます。

一方で社交不安障害や学校恐怖症のある人たちにとっては、登校や出社が必要なくなることで不安が減るという恩恵ももたらしました。

人間は社会的動物ですから、社会や仲間との交流がない状態は孤独で寂しいものです。人によっては一人でいることが「恥ずかしい」と感じる人もいます。

しかし、人間関係の中で生まれるストレスにもさまざまなものがあるわけで、孤独が必ずしも心に悪い影響を与えるものではないと私は考えています。