苦手意識のある物事に取り組むとき、不安や恐怖を解消する方法は何か。ハーバード大学に務める小児精神科医の内田舞さんは「例えばプレゼンの前に緊張しがちな人は、自分を客観視して、考え方の癖である『認知の歪み』と向き合う必要がある。果たしてプレゼンでつっかえることが恥ずかしいことなのか、何か悪いことが起こるのかと再度評価してみるといい」という――。
※本稿は、内田舞『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
一人ひとり異なる認知。失敗して「仕方ない」「もう終わりだ」
私たちがさまざまな感情を抱くことも、それによって起こす行動も、すべては脳の反応によって起きていることです。そのうち認知とは私たちの「考え」や「物事の捉え方」のことです。
そもそも認知はどこからやってくるのでしょうか。
私たちは一人ひとり違う考え(認知)を持っています。この違いには第一にもともとの性格などの生物学的な要素が影響しています。
新しい友達を作ることが楽しいと感じる社交的な人もいれば、人との関わりよりも一人で過ごす時間が好きという人もいて、小さなことに物怖じしない人もいれば、一つ一つの出来事に大きな意味を感じる人もいます。
そのような生まれ持った性質に加えて、これまでの生育環境や、出会った人、経験したことなどから、その人の価値観が形作られていきます。
例えば、失敗をしてもそれを修正してリカバリーした経験のある人であれば、一つのつらい経験が「自分の糧になる」と考えられることもある。また、一つの試験に落ちても他の分野でいい評価を受けたことのある人ならば「仕方がない」と流せるかもしれません。
しかし、失敗をしたことがない人、多様な軸での評価を受けたことがない人、失敗をしたときに罵倒された経験がある人などは、同じ状況でも「もう人生はおしまいだ」とより悲観的に考えるかもしれません。
このように、同じ出来事でも認知は人それぞれなのです。