宏池会体質そのままの岸田首相
【石橋】吉田茂が有能な官僚を集めた「吉田学校」が宏池会の母体となっています。
【田村】とくに宏池会は財務省の出先機関同然です。その中枢にいるのが、宏池会の会長でもある首相の岸田文雄さんです。
【石橋】宏池会は官僚と親族を結婚させ、閨閥をつくるのが特徴です。岸田さんはその典型例だと言えるでしょう。
明治神宮近くに「穏田マンション」といわれる白亜の洋館がありました。岸田さんの祖父で、衆議院議員も務めた実業家の岸田正記が昭和初期に旧伯爵家から買い取った洋館で、現在はマンションに建て替えられています。
ここが岸田さんの東京の実家であり、かつて他の住民は財務(大蔵)官僚ばかりだったそうです。岸田さんにはふたりの妹がいますが、ともに財務官僚と結婚しています。さらに、親戚には財務官僚がずらりといます。まさに閨閥です。
岸田内閣の主要メンバーも財務省出身者がやたらと多い。前厚生労働相の加藤勝信さん、前経済再生担当相の後藤茂之さん、元総務相の寺田稔さん、元経済安全保障担当相の小林鷹之さん……。最側近といわれる前官房副長官で幹事長代理の木原誠二さんも財務省出身です。
財務省は、岸田さんが首相になって心から喜んでいると思います。
元財務官僚の従兄弟が「重要ポスト」に
【田村】自民党参議院の宮澤洋一さんも、たしか岸田さんの親戚にあたるのではないですか。
【石橋】岸田さんの従兄弟です。岸田さんの叔母が元首相の宮澤喜一さんの弟に嫁いで、生まれたのが、宮澤洋一さんです。
彼は、東大法学部を卒業して財務(大蔵)官僚となり、衆院3期、参院3期を務めたベテランです。
宮澤喜一さんの甥でもあり、宏池会会長になってもおかしくないはずですが、まったくそんな声が上がらないのは人望がないからでしょうね。
【田村】それでも、自民党税制調査会(自民党税調、*1)長のポストには就いています。
*1 自民党税制調査会(自民党税調) 自民党における審議機関のひとつで、例えば、1971年度税制で道路特定財源のための自動車重量税を創設、1973年度税制で個人事業主に給与所得控除を実現したが、このころから税制において主導権を握るようになっている。