財務省はなぜ増税にこだわるのか。産経新聞特別記者の田村秀男さんは「均衡財政を定めた財政法第四条を金科玉条のように守ろうとしているからだ。政治家にもプライマリー・バランス重視の政策をやらなければいけないと説得し、緊縮財政策をとらせてきた」という。ジャーナリスト石橋文登さんとの共著『安倍晋三vs 財務省』(育鵬社)より、一部を紹介する――。
財務省庁舎
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均衡財政を基本とする「財政法第四条」

【石橋】増税は財務省の「省是」だ、と言われてきました。そもそも、なぜ省是になったのか、そこを田村さん、解説していただけますか。

【田村】いちばん大きいのは、「財政法第四条」の存在です。1947年3月に施行された財政法は、予算の種類、作成と執行などについて規定した、国の財政に関する基本法です。

1947年というのは、まだGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治下にあり、日本国憲法が施行された年でもあります。

財政法はこの年の4月1日に施行されていますが、日本国憲法は5月3日です。

戦争放棄を定めたのが、日本国憲法の第九条です。そして財政法の第四条は、均衡財政(*1)を基本として国債を発行しないと決めた法律です。

*1 均衡財政 中央政府や地方政府の予算において、経常収入が経常支出と等しくなる状態。収入が支出を上まわれば黒字財政、下まわれば赤字財政となる。

借金をしないために、増税して歳入を増やす

大東亜戦争を起こした反省から、憲法第九条で戦争放棄した日本が、その戦費を国債で賄った反省から、国債は発行しないと誓ったわけです。この原案を書いた財務省の、当時は大蔵省ですが、課長がそのように語っています。

国債を発行しないということは、その年の歳入だけで、その年の国の歳出を賄うことになります。

歳入と歳出が均衡する、均衡財政です。

第四条には、〈国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。〉と書かれています。

これを財務省は金科玉条のように守ろうとしているので、借金を嫌うわけです。

しかし歳出は増えるばかりだから、それを賄うには増税して歳入を増やすしかないと考えている。均衡財政を守るために増税して歳入を増やす、という発想です。

【石橋】政治家は、勉強不足な人が多い。だから、財政法についても、ほとんどの政治家が理解していなかったと思います。

それでも、防衛力増強が大きな政治課題となるなかで、自民党の部会でもようやく財政法に焦点があたるようになりました。

これは大きな前進だと思います。これまでは話題にも上がりませんでしたから。