※本稿は、駒ヶ嶺朋子『死の医学』(集英社インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。
オンラインゲーム依存症が精神科診断マニュアルに掲載
シミュレーションと熱中できる運動という2つの面から、ゲームによるリハビリの可能性は無限大だと思われる。しかし現時点でゲームがリハビリプログラムに取り入れられているかというとまだわずかである。
医学論文の数では、インターネットやデジタルゲームを医学応用したという報告より、ゲームの危険性、特に依存性についての報告のほうが多い。
精神医療の標準化を目的として編纂されている『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)』という、辞書のような本がある。2013年に改訂された第5版ではとうとう、「今後の研究のための病態」の項に、「インターネットゲーム障害」が登場した。
デジタルゲームへの依存症は、特にオンラインゲームでよく起きるので、こうした病名になった。
依存が起きやすいゲームの種類も調査されており、マルチプレーヤー参加型オンライン・ロールプレイング・ゲームで最も依存症の頻度が高い(※1)。
※1 Smyth JM. Beyond self-selection in video game play: an experimental examination of the consequences of massively multiplayer online role-playing game play.Cyberpsychol Behav 2007;10:717-721.
3割弱の人が「依存していた時期がある」と回答
インターネットゲーム障害はゲーマー全体の1割ほどと考えられている(※2)。
※2 Gentile DA et al.Internet gaming disorder in children and adolescents. Pediatrics 2017:140;S2:S81-S85.
さらに自己申告で「人生の一時期でもゲームに依存したことがあるかどうか」という、最もスパンの広い調査をしたところでは、3割弱の人が「依存していた時期がある」と答えたという(※3)。
※3 Wittek CT et al. Prevalence and Predictors of Video Game Addiction: A Study Based on a National Representative Sample of Gamers. Int J Ment Health Addict. 2016;14:672-686.
私自身も任天堂の初代ファミリーコンピュータを買ってもらって、学校から帰宅するなりランドセルを背負ったままマリオを数時間続けるという異様な執着を示して、1週間かそこらで取り上げられてしまった、という経験がある。
普通にゲームを楽しむこととは別に「問題となるゲームの仕方」というものがあるので、それを避けようという啓蒙は必要だと考えられている。