ゲームが上手いほうが内視鏡手術が上手い

ゲームをする時間が長時間にわたり、頭痛や、不眠による不登校をきたして、外来に連れて来られる方がいる。ただ、その中には、将来ゲームクリエイターになりたい、コンピューターのプロになって、新しいプログラムを創り出したい、だから、長時間をゲームに費やしている、という少年少女もいる。

近年では、「e-スポーツ」も台頭しつつある。いずれ、寝たきり状態の方が、e-スポーツの選手として活躍する、といった時代が来るのだろう。

リハビリや医療を担当する医師たちの中にも、ゲームで育った世代が増えている。

近年、外科手術の主流は内視鏡手術に移ってきているが、ビデオゲーム歴があった方が内視鏡手術が上手い、あるいは、ビデオゲームが上手いほうが内視鏡手術が上手い、という論文も多々ある(※6、7)。

※6 Sammut M et al. The benefits of being a video gamer in laparoscopic surgery. IntJ Surg 2017;45:42-46.
※7 Datta R et al. Are gamers better laparoscopic surgeons? Impact of gaming skills on laparoscopic performance in "Generation Y" students. PLoS One 2020;15:e0232341. doi: 10.1371/journal.pone.0232341

モニターを見ながら手元を操作する技術が、ゲームを通じて身についているためだろう。

ゲーム依存が悪かどうかは人による

時代に応じて生き抜く手段は更新されていく。

駒ヶ嶺朋子『死の医学』(集英社インターナショナル新書)
駒ヶ嶺朋子『死の医学』(集英社インターナショナル新書)

依存症で生活がままならない、あるいは、依存の仕組みによって誰かに支配され、搾取される、ゲーム自体が夢であっても、依存に陥り逆に夢が遠のいてしまう。

もしそうした状況にあるならば、依存症から抜け出す手立てを考えるべきだ。

しかし、ゲームの全てが悪というわけではない。「ゲームに没頭する力」をもって、技術を磨き、社会に新しい価値をもたらしてくれるなら、ゲーム依存を全否定できないのではと思う。

万が一、最初の出会いが、親が子どもを黙らせるために与えたのであったとしても、そのゲームを自分の力に変えることもできるだろう。

ゲームに没頭する時間が自己実現につながるのか、それとも誰かに搾取されるだけなのか。

その答えは一人一人異なる。

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