女性ホルモンの変化による不調は多い。漢方薬局で健康相談を受ける邱紅梅さんは「40歳を過ぎるとプレ更年期にさしかかり、精神的なパワーが衰えて問題が噴出する人が多い。女性の人生の黄金期は閉経を迎え、育児からも解放された60代以降にやってくる」という――。

※本稿は、邱紅梅『生理痛は病気です』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

もっと早く来てくれていたら……

日本の女性たちを見ていると、「元気になりたい」「生理痛をなくしたい」といった欲求が比較的低いと感じます。美容のためにはある程度の投資をしていますが、「社会的成功のために自分の体を元気いっぱいに整えるべきだ」と貪欲に求めている人は少数派。物静かで常時控えめで、行動に移すことがあまり得意ではない方が多い印象です。

先日、知人を通して紹介された日本女性も、私の連絡先を知人から聞いて1年が経ってから、ようやく予約を入れてきてくれました。「前から勧められていたけれど、なかなか来る機会がなくて……」と、不調を抱えたまま我慢し続けていたようです。

もやもやしている若い会社員女性
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

その女性は45歳で、不妊治療を希望されている方でした。不妊治療をするにあたって、44歳で始めるのと、45歳で始めるのとでは、その可能性は大きく変わってきます。そのため、行動を起こすことができない女性たちに対して、「もっと早く来てくれていたら……!」と残念に思うことがしばしばあるのです。

「気虚」で心身が疲れ切っている日本女性たち

日本女性はもともと、気性が穏やかで欲張りではないということもありますが、この日本と中国の女性たちの違いを漢方的に見ると、日本女性には「気虚ききょ」、中国女性には「実証じっしょう」という漢方的な体質を持つ人が多いことが関係していると、私は考えています。

「気虚」とはその字の通り、「気(エネルギー)」が「虚(からっぽ)」な体質を指します。のちほど詳しく解説しますが、気虚は女性の生理にも大いに影響を与える漢方的な体質です。

それに対して「実証」は、丈夫で体力があり、疲れにくいのが特徴です。

気虚によるエネルギー不足が生じると、思いついても行動に移す元気が湧いてきません。体質で行動が変わるため、当然ながら、結果も大きく変わります。生理痛や生理不順があったとしても、それを治す気力もなく、鎮痛剤を飲んでその場をなんとかしのぐ……という繰り返しになります。

日本女性は忍耐強いとよくいわれますが、私は気虚によって、困難を解決・打破するパワーがないために、現状維持をするしかない状況にあるのではないかと考えています。毎日の仕事や家事、育児を、日々こなすことで精いっぱいになってしまい、その他のことに手を付ける元気が残らないのです。何か必要に思っていても、問題解決をしなければならないと感じていても、それに手を付ける行動力や意志力が枯渇した状態になってしまっているのです。

この気虚もまた、生理痛を放置することで、年々悪化していきます。生理痛に無頓着な人は、生理不順にも、更年期にも無頓着となる傾向があります。

つまり、女性の場合は、生理痛から始まり、生涯にわたって不調を抱えたまま生きていくことになってしまっているのです。