シンプルでロジカルな文章は、実は理数系人間が得意とするところ。新発想の文章術をプロが指南。まずは長文との決別から始めよう。

小飼式文章術

ブロガー、プログラマー、投資家
小飼 弾

1969年生まれ。96年ディーエイエヌ有限会社設立、99年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)CTO(取締役最高技術責任者)。著書に『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』『弾言』など。

アウトプットは質より量です。普段から何も書いていないのに、「いいアウトプットができない」と愚痴る人がいますが、僕に言わせれば「10年早い!」です。量が伴わずに、質が向上するわけがないのですから。

量が積み重なって質的な変化を起こす臨界点のことを、クリティカルマスと言います。たとえばスポーツや楽器のクリティカルマスは1万時間だとよく言われます。最初は練習してもたいして上達しないが、1万時間を突破すれば、突然、技術が飛躍的に伸びるというわけです。

文章も同じです。1万時間というと、毎日3時間弱、文章を書いていたとしても約10年かかります。それだけの量をアウトプットしないと、けっして文章はうまくならない。たまに文章を書く程度なのに「どうして上達しないのだろう」と悩むのは、前提から間違っています。悩む前に、とにかく書けばいいのです。

なかには、「うまく書けないのにアウトプットするのは恥ずかしい」と考える人もいます。自分のアウトプットに対して低評価を下されることが怖いのかもしれませんが、それは「自分ならうまく書けるはずだ」という過度な期待の裏返し。どうせ10年はうまく書けないのですから、開き直って書き始めるべきです。

技術がなくてアウトプットに失敗した人と、何も書かずに安全圏にいる人がいれば、僕が評価するのは前者です。何も書かず利口ぶっている人は、失敗する人よりさらにレベルが低い。一生、クリティカルマスとも無縁でしょう。

仕事で求められる文章だけでなく、日々感じたことをツイッターでアウトプットしてもいい。短い文章でも、書き続ければ、いずれはクリティカルマスに達します。それを信じて、まずはひたすら書き続けることです。