なぜ日本経済は停滞しているのか。エコノミストの会田卓司さんと榊原可人さんは「停滞の原因は、緊縮財政による将来不安にある。日本政府は社会保障支出を削減するべきではない」という――。
※本稿は、会田卓司・榊原可人『日本経済の新しい見方』(きんざい)の一部を再編集したものです。
少子化対策として「増税・社会保障削減」は適切なのか
岸田首相は「異次元の少子化対策」を掲げていますが、その財源が問題になっています。先日発表された案では、28年度までに安定財源を確保するとしつつ、当面は「つなぎ国債」でまかなうことになりました。
増税や社会保障の削減は事実上先送りされた格好ですが、議論がなくなったわけではありません。
そもそも、少子化対策としての増税・社会保障削減ははたして適切なのでしょうか。
日本経済がここまで低迷している原因は、高齢化や財政赤字ではなく、緊縮財政の影響だと考えます。その裏付けとなる点をいくつかご紹介してみたいと思います。
日本の社会保障支出総額は実は少ない
よく「日本は中福祉国」だと言われます。財務省の資料によると、OECD諸国の中では、日本の社会保障支出は「中程度」で、国民負担率は低いとされています(図表1)。
つまり、日本の年金・社会保障は「低負担のわりには支払われている」とされているのです。
しかし、次に見るように、グローバル・スタンダードと比較すると、日本の社会保障支出の総額はかなり少ないのです。