名目GDP比で5%という少子化対策
深刻な日本の少子高齢化であるが、コロナショックを受けてそれが一段と促されてしまった。厚労省が今月発表した2022年の人口動態統計(概数)によると、出生数は77万747人で、初めて80万人を下回った。合計特殊出生率も1.26で過去最低となった。
こうした事態を受けて、岸田文雄政権は少子化対策の強化について議論を始めた。3月末に内閣府の外局である「こども家庭庁」が『こども・子育て政策の強化について(試案)』という文書を、こども政策担当大臣の名で発表した。その内容や財源を巡っては、与野党間のみならず、与党内でも様々な議論が続けられている。
日本のみならず先進国、そして中国でも、少子化対策の必要性が叫ばれて久しい。そうした中で、欧州連合(EU)の加盟国であるハンガリーによる「異次元の少子化対策」が日本で注目を集め、称賛する声が聞かれる。
具体例を挙げると、ハンガリー政府は子育て世代への無利子貸付や住宅購入補助、子どもがいる母親の所得税の優遇といった諸政策を用意し、子育てを支援してきた。
これらの少子化対策に伴うハンガリー政府の支出は、名目GDP(国内総生産)の5%に及んでいる。経済開発協力機構(OECD)の統計によると、日本の子ども・子育て支援に対する公的支出の対GDP比率は2020年時点で1.7%だった(OECD平均2.1%)。単純比較はできないが、ハンガリーの少子化対策の規模の大きさが分かる。
出生率はV字回復したが…
その結果、2011年には1.23にまで低下したハンガリーの出生率は、2020年には1.56まで上昇した。
とはいえ、これをどう評価するかは、様々な意見があるだろう。ハンガリーのように大規模にやって初めて出生率は上昇するともいえるし、ここまで大規模にやっても人口の安定的維持に必要な出生率2以上には達しなかったともいえる。
それに、今後も大規模な少子化対策を継続したとして、出世率はさらに上がるかどうかはわからない。一方で、少子化対策に伴う出費は膨らみ続けるから、歳入が確保できなければ国債の発行で財源を賄う必要がある。したがって、効果が不透明な少子化対策のツケを将来世代に押し付けていいのかという素朴かつ重要な疑問も出てくる。