内容が多岐にわたるため詳細は割愛するが、このスキームでは、いわゆる親2人子2人の標準世帯が一定規模の住宅を購入する場合、新築物件では260万フォリント(約105万円)の、中古物件では143万フォリント(約60万円)の補助金が、政府から支給される。こうした補助は、多子世帯であればあるほど拡充される制度設計になっている。

例えばハンガリーの政策金利の水準は2023年4月時点で13%であるが、子どもが3人以上いる世帯の場合、25年間1000万フォリント(約400万円)までの借り入れに関しては3%の固定金利が適用される。借入の一部の適用にとどまっているとはいえ、政策金利との見合いで考えれば、3%が極めて低い水準であることに変わりはない。

ハンガリー、ブダペスト
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さらに新築住宅に関しては、購入に際して発生した付加価値税の負担分が500万フォリント(200万円)まで払い戻されるとともに、適用される付加価値税率も27%から5%にまで引き下げられる。ほかにも様々なインセンティブが用意されているが、少子化対策であるから、基本的に多子世帯ほど手厚い補助を施すように制度が設計されている。

日本でも住宅ローン減税というかたちで住宅購入支援策が行われており、現行の制度では、借入金の規模次第で最大455万円の支援を受けることができる。一方で、ハンガリーの場合、少子化対策としての性格から、あくまで多子世帯ほど手厚い支援を受けることができるように設計されているという点で、日本の支援策と性格が異なる。

子育て支援策が、子育て世代を苦しめる

ハンガリーの家計部門の借入残高は2021年時点で名目GDP(国内総生産)の20.3%にとどまっており、EU平均値(58.0%)を大きく下回っている。ハンガリーでは住宅ローンの98%がフォリント建てであり、期間も5年超の長期である。そして、5年超の長期物のローン残高に適用される返済金利は、まだ5%程度で収まっている。

新規の住宅ローン金利に関しても、5年超の金利が4月時点で平均8.2%と、政策金利の水準のみならず、消費者物価(4月は前年比24.0%上昇)に比べても大幅に低い。一方で、住宅需要は徐々に圧迫されており、四半期ベースの名目住宅価格は2023年7~9月期にピークアウトするなど、住宅市場は徐々に調整色を強めている。

そうはいっても、ハンガリー政府による「異次元の少子化対策」の下で、住宅購入支援策は今後も継続するだろう。したがって、今後も住宅需要はそれほど冷え込まず、住宅価格の下落は限定的かもしれない。もしそうであるなら、借入の規模が小さいために逆資産効果も限定的となり、個人消費の下押し圧力も弱いものにとどまる。