現状より10ポイント近く増やす必要がある

社会保障支出を比較する場合、高齢化度合いの差を考慮する必要があります。

高齢化にともなって社会保障費が増えるのはある意味当然だからです。

縦軸に社会保障支出の対GDP比、横軸に高齢化率(65歳以上人口の割合)を取って散布図にすると、OECD各国はおおむね右肩上がりの配列で並んでいます。

つまり、普通の国は、高齢化にしたがい、社会保障支出を増やしているということです。

【図表】社会保障支出の対GDP比と高齢化率の散布図

図表2のグラフを見ればわかる通り、日本の社会保障支出はOECDの平均的な傾向を大きく下回っています。

日本の高齢化率は世界最高水準なので、グローバル・スタンダードに従うなら、日本の社会保障支出の対GDP比は、現状より10ポイント近く上でもおかしくありません。

日本の社会保障支出はまったく足りていないのです。

日本の年金はグローバル・スタンダードより少ない

日本の社会保障支出はトータルで見れば少ないが、年金など高齢者向け支出の水準は低くない、という主張もあります。

年金にまわしている分、子育て支援などにしわよせがきている、というわけです。

しかし、単純に高齢者向け社会保障、すなわち年金が足りていないのも事実です。

高齢者向け社会保障支出の対GDP比と、高齢化率の散布図(図表3)を見ると、日本はOECD諸国より低い位置にいるのが明らかです。

日本の年金はグローバル・スタンダードより少ないのです。

【図表】「高齢者向け」社会保障支出の対GDP比と、高齢化率の散布図

日本では所得の把握が不十分なので、高齢者間の配分が適切ではない、という意見もあります。豊かな人の負担が軽く、困窮する人の負担が相対的に重い傾向がある、というわけです。

ただ、そうした再分配の問題以前に、そもそも年金の総額自体が全然足りていないのです。