日本では子どものいない女性より子どものいる女性のほうが、幸福度が低い傾向にある。では孫についてはどうか。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「最近の研究で、孫育てによる負担が母方の祖母の幸福度を大きく下げていることがわかった。日本の女性は若い頃は自分の子育てで幸福度が低下し、老いてからは孫育てでも幸福度が低下する状態だ。背景には他国と比べて家事・育児の負担が重く、しかもそれが女性に偏りがちという構造的な問題がある」という――。
孫を持つと幸せになるのか
皆さんは「孫」という曲をご存じでしょうか。演歌歌手の大泉逸郎氏が1999年に発表した曲で、孫のかわいさを歌い、大ヒットしました。なんと、通算売り上げが約230万枚にもなっています。
この曲で歌われているように、おじいちゃん、おばあちゃん世代から見た孫はかわいいものです。おそらく、直接的な育児の責任がないと同時に、精神的・経済的な余裕から子どものかわいさを愛でることができるという背景があると考えられます。このため、自然な発想として、孫がいるほど幸福度が高くなりそうです。
共働きの増加で「孫疲れ」も…
しかし、近年では「孫疲れ」という言葉も聞かれます。背景にあるのは共働きの増加です。共働き世帯が専業主婦世帯を上回って久しく、「働く母親」が増えています。これらの世帯を支援するために、シニア世代が孫の面倒を見るケースが徐々に増えている可能性があります。これは「孫育て」と言われており、食事の用意やお泊まりの世話、遊び相手などで心身ともに疲れてしまいかねない状況なのです。
はたして実態はどうなのでしょうか。人生100年時代において、孫と接する時間が増えていく中、孫の存在がシニア世代の幸福度にどのような影響を及ぼすのかという点は、気になるところです。
実はこの点に関して、日本だけでなく欧米でも興味・関心が集まっています。背景にあるのは高齢化の進展です。近年、先進国を中心に孫との関わりがシニア世代の幸福度に及ぼす影響が分析されており、興味深い結果が得られています。
まずは日本の結果から見ていきましょう。