マッチング・アプリでの婚活が失敗する人にはどんな特徴があるのか。フリージャーナリストの速水由紀子さんは「私が出会った50代の男性は、借金をして建てた豪邸に100人以上の女性を招いていたが、結婚できずにいる。出会った人の内面に興味を持てない人は苦戦しやすい」という――。(第1回)

※本稿は、速水由紀子『マッチング・アプリ症候群』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

頭を抱える男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです

再婚するために借金をして千葉に家を建てた55歳の男性

石造りの白亜の豪邸に、ガーデンテーブルが置かれた広々としたウッドデッキ。暖炉がある吹き抜けのロフトルームにはブランド物の家具が置かれ、可愛い2匹のポメラニアンが走り回る。そしてドラマに出てくるような光が降り注ぐおしゃれなアイランド・キッチンには、カフェのような白木のカウンターテーブルが備え付けられている。

そんな住宅雑誌のグラビアのような写真が、プロフィール写真にこれでもかと続く。

大手アプリでマッチングした55歳のyasさんの持ち家だ。何度かメッセージをやりとりするとすぐLINEに誘われて、会って話してみることになった。ルックスは白髪交じり、中肉中背でゴルフ・ポロシャツ姿の、いかにも中間管理職の会社員風だ。とにかく不動産屋の営業のようにトークが手慣れていて、ガンガン押してくるのに驚いた。

もう最初のアプリに入会してから3年目。マッチングした人数もかなりのものらしい。

yasさんは6年前に離婚し、住んでいたローン完済のマンションを妻子に渡して新しいこの家を建てた。

「この歳で離婚したらもう再婚も難しいんじゃないかと焦って。それなら新しい妻に住んでもらいたい家を買おうと、銀行に借金をして千葉に家を買ったんですよ。特にキッチンとかリビングとかかなり凝りました。見てください、このアイランド・キッチンいいでしょう? スウェーデンからの輸入物なんです」

結婚したら住むのは君だから最初に見て決めてほしい、というのが口説き文句。とにかく話題といえば家がどんなにおしゃれで便利で住みやすいか、愛犬のポメラニアンがどんなに可愛いかということばかりで、yasさんがどんな人間かは謎に包まれたままだ。