離婚したからといって人は急には変われない
昭和生まれ50代から60代の経済成長期世代にとって、嫁は常に「内助の功」「良き妻、良き母」が理想とされ、それを大っぴらに語っても問題なかった。妻子は経済的にも政治的にも企業戦士の従属物のように扱われ、ジェンダーギャップは世界116位の今よりずっと底辺で、#MeTooなどありえなかったのだ。
そんな時代に育ってきたyasさんのような男性たちが、離婚したからといって急には変われない。「いつも家で待っていてくれて、アイランド・ダイニングで美味しいご飯を作ってくれる嫁」を探すのをやめて、興味を持った誰かと生き方を擦り合わせていくしかないのに。それができたら離婚もしていないだろう。
時代が変わってしまったことにまだ追いつけない彼らは、心地いい涙を誘う昭和の思い出にノスタルジーを抱くしかないのか。そんな話をしている側から、彼はスマホでアプリを盗み見ている。次の豪邸見学者が見つかったようだ。結局、私はyasさんの期待に沿えないまま、豪邸を後にすることにした。
駅まで車で送ってくれたyasさんは「よかったらまた遊びに来て」と手を振ったけれど、きっともうここに来ることはないだろう。