100人近い女性が料理やワインを楽しんでいったが…
思い切ってずっと引っかかっていた疑問をぶつけてみた。
「今までアプリで知り合った女性はどれぐらい? お宅を見に来たのは何人ですか?」
「もう100人に近いですね。みんな見学してデリバリーしたイタリア料理やワインを楽しみながらおしゃべりして帰られますよ」
100人の豪華戸建て専業主婦希望者が、この家で夜な夜な晩餐を繰り広げていた……。なんだか単なる「豪邸見学会」には終わらない、危険な雰囲気が漂っているのだが。yasさんは青髭なのか? 地下室のドアを開けたら、その女性たちが幽閉されているのか? ダイレクトに見学者たちとの関係を尋ねると……。
「いや、大体は楽しく盛り上がっておしゃべりして……という友達ノリです。もちろん親しくなってちゃんと付き合った人も何人かいましたけど、最終的には結婚まで行かなかったんです」
だっていくらドラマのロケができそうなおしゃれな家でも、家と結婚するわけじゃない。肝心のyasさん自身の結婚適性はどうなのか? 突っ込んで聞いてみると……意外なことに、白亜の豪邸は彼の辛い過去からのリベンジだったのだ。
離婚後に新築戸建てを建てるのはかなり異色
最近、人気が上がっている千葉のベッドタウンの駅前からバスで十分。駅前には衣料品チェーンストア、大型量販店、居酒屋や大型スーパーなどが揃っているが、少し離れると静かな住宅地が続く。
yasさんの邸宅は川沿いの新興住宅地に建っていた。柵に囲まれた庭はきれいにガーデニングされていて、広々としたウッドデッキにはBBQセットが置かれている。駐車スペースには小型のワゴン車が置かれ、とても一人暮らしとは思えない。明らかにファミリーを意識した作りだ。
大手マッチング・アプリで知り合ったバツ持ち男性に今、どんなところに住んでいるかを聞くと、大抵、離婚後、単身用のマンションに引っ越したと答える。財産分与を要求され家を妻に渡したり、家を売った半分の金額を渡したりすることが多いため、家賃を節約しなければならないからだ。最近は早期退職後や定年退職後の妻からの離婚が増えたため、持ち家にそのまま住むことはますます難しい。
だから離婚後に新築戸建てを建てて住んでいるyasさんは、かなり異色だ。2匹の白いポメラニアンと一緒にロックTシャツにデニム姿で迎えてくれたyasさんは、テンション高く陽気にしゃべりながら家中を案内してくれた。
ご自慢のアイランド・キッチンは収納棚に調理器具も調味料も極端に少なくてほとんど使った痕跡がなく、吹き抜けのダイニングテーブルには買い置きのカップ麺が置かれているし、寝室のツインのベッドは一つしか使われていない(多分)。要するに、この家のファミリー機能は、まだ残念なことにまったく活かされていないのだ。