「他人に興味を持つ」ということが根本的に分かっていない
会員数2000万人、最大手で20歳から45歳ぐらいがメインのペアーズ。「今日暇」「週末空いてます」というゲーム感覚の「おでかけ機能」で出会えるタップル。心理テストで相性のいい相手を紹介してもらえる、趣味の好みカードがあるなどマッチングしやすいウィズ、バツイチの再婚希望者や50代、60代もマッチングできるマリッシュ。
それぞれ特徴やメリットが異なるので、複数登録することでマッチング率は確実に上がるのだ。
yasさんは3年間に5つのアプリに登録していたが、もうマッチングから「メッセージ→LINE→ビデオトーク→お家見学」の段取りが決まってしまって、完全にマニュアル化しているという。
「それでどう? このままここに住んでみない? 絶対、楽しいよ」
テイクアウトのピザとビール(私はコーヒー)でランチしながらおしゃべりしていたら、お約束の誘い文句が飛んできた。ノリが軽すぎて、相手によってはワンナイト的なナンパとも受け取られかねない。
「私のこと何も知らないのに。仕事とか今までの生活とか結婚観とか何も聞かないじゃないですか。興味がないのに一緒に住もうって言われても……」
私がそう返すと、yasさんは驚いて「興味があるから家に呼んだのに」と言った。彼は女性の気持ちが本質的にわかっていない。他人に関心を持ったら、どんな人か、何を考えているのか、プライオリティは何なのか知りたくなるはず。なのにyasさんの会話はまるで飲み会でのセフレナンパのように表面的で内面に無関心だ。この家に住みさえすれば、リビングのソファに座ってさえいれば満足なのだろうか。
なぜ自分が「圏外」扱いされるのか理解していない
人は自分に関心を持たれていないと、相手にも興味がなくなる。「どうでもいい人」「圏外の人」になる。
圏外だからもはや電話も繫がらないし、意思の疎通ルートも途絶えてしまう。最終的にはそこにいてもいない人になる。それが妻や娘とのシステム障害を起こした理由だったのだろう。yasさんの家族がyasさんを「圏外」とみなしたのは、彼にとって家族が「圏外」の理解不能な人々だったからだ。
そして今、yasさんはマッチング・アプリで出会った女性たちに、同じ失敗を繰り返している。たとえセックスをしても一緒の家に住んでも、何も通じ合えない相手はいずれ「財布」か「耐久消費家具」か「不用品」になってしまう。アプリで話を聞いたバツイチ男性組は、半数がこのケースだった。
だから夫の退職や定年を待ち構えていた妻に、財産分与で別れよう、と言われる。そしてさらに哀しいことに彼らは自分がなぜ妻から「圏外」認定されたのか、どうすればそれを圏内にできるかもわかっていない。だから何年アプリをさすらっていても理想の再婚相手に巡り合えないのだ。yasさんの無限ループがこれからもずっと続くかもと考えると虚しい気持ちになった。