急速な円高の進行で輸出企業を中心に業績悪化の懸念が高まり、リストラの影が再び忍び寄ってきている。こうしたなか、「資格を取って第二の人生に備えたい」と考える人が増えているようだ。
2003年の春から毎年『資格図鑑!』という資格ガイド本を刊行してきた私だが、「資格取得で勝ち残る」という思考回路は現実の世界からの逃避になりやすいと思っている。いま就いている職業の先行きに対する不安感が募り、「将来の生活の基盤を支える根っこが何かほしい」という気持ちが芽生えてしまうのも人情だろう。
しかし、資格に関していうと、遠目で見て美味しそうな実がなっているかのように映り、どんな実か確かめる前に採ろうとしてしまう。仕事の実体を知らぬまま、取得の試験勉強に走りがちなのだ。勉強は励んだ分だけ成果が出るから。で、晴れて念願の資格を取得した途端、厳しい現実を突き付けられる。
たとえば、若い女性の人気も高まっている社会保険労務士。年金問題で増えた行政の相談業務などにまだ仕事の口はあるものの、それでも年収200万~300万円がやっとである。また、「同じ社労士仲間を見ると中高年のオジさんばかりで驚いた」といった戸惑いの声もあがっている。
この社労士をはじめファイナンシャル・プランニング技能士(FP)、行政書士など、ある程度勉強すれば取得できる資格の人気は高い。それらを過剰に勧めているのは資格スクールだ。テレビで乱発されている、爽やかな通信講座のCMを目にすると、資格バブルの発生を指摘したくなる。雑誌などで資格マニアの談話があると、「別の本業で食べられるから趣味にできるんだよな」と毒づきたくなる。
それだけに「オススメ資格はこれ」とは断言しにくい。何百とある資格のなかで、取得した後にきちんと食べていける可能性の高い資格はごくわずかと考えているからだ。