▼小宮さんからのアドバイス

経営コンサルタント 小宮一慶 こみや・かずよし●1957年、大阪生まれ。銀行勤務後、MBA取得。著書に『社長の教科書』『どんな時代もサバイバルする人の「時間力」養成講座』など多数。

目的や目標をもたないまま勉強を始めても、モチベーションを維持できず、長続きはしません。では、目的や目標はどのように決めればいいのか。自己啓発や仕事術の本に紹介されているのはたいがい、5年、10年後にこうなりたいという長期目標をまず定め、そこから年間計画や短期目標に落とし込むというやり方ではないでしょうか。

実はこの方法には、大きな欠陥があります。それは、将来自分はこうなりたいといえるためには、人生の目的や自分の存在意義を知っていなければならないことです。人生の目的は何かと聞かれてすぐに答えられるような人というのは、そうはいません。それに、突然考えろといわれたところで、そう簡単に見つかるものでもありません。そこで私がおすすめするのは、遠い将来のゴールからブレークダウンしていく代わりに、週や月単位の目標を立て、それを繰り返しながら人生の目的を探していくというステップアップ方式です。つまり、最初に長期目標を立てるのではなく、まず短期目標からスタートするのです。具体的には、年間目標ではなく、月間目標から始めます。

私自身も若いころは、人生の目的などまるで考えず、目の前の仕事にただ一生懸命取り組むだけの日々を送っていました。意識が変わったのは、30代になってからです。自分の実力を証明するものが必要だと思うようになり、情報処理技術者や証券アナリストの資格を取りました。それが自信になり、現在の自分の延長線上で、何かやれるかもしれないと思い始め、いまは経営コンサルタントとして経営者を育てる仕事をしています。

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出典:gooリサーチとの共同調査「あなたの時間の使い方に関するアンケート」(n=1500万円以上306人、500万円台311人/2009年11月調べ)

資格の取得といったゴールのあるものでなければ、目標にならないわけではありません。毎月一本映画を観ることでも、園芸の勉強をすることでも、それをやることで自分の人生が幸せになると思えることならなんでもいいのです。それに、この資格をもっていると将来有利だからというような理由で、あまり関心のないことを目標にしても、苦痛なだけです。それよりも、現在の仕事に活かせるような実利的な目標を設定したほうが現実的ですし、今後のキャリアを考えるうえでも意味があると思います。

※すべて雑誌掲載当時

(山口雅之=構成)