朝日新聞と西日本新聞が5月から購読料を1カ月4400円から4900円に引き上げる。フリーランス記者の亀松太郎さんは「75歳の私の母は50年以上の愛読者だが、値上げのことを知らなかった。いま新聞を購読している人たちの中には、残念ながら朝刊1面の社告すら読んでいない人もいる」という――。

朝日新聞東京本社
朝日新聞東京本社(写真=PRiMENON/CC-BY-SA-3.0-migrated/Wikimedia Commons

5月から500円値上げする朝日新聞と西日本新聞

朝日新聞は5月から、紙の新聞(朝夕刊セット版)の購読料を1カ月4400円から4900円に引き上げる。2021年に約400円アップしたばかり。この2年で、一気に900円も上がったことになる。

福岡に拠点を置く西日本新聞も同様に、4400円から4900円へ購読料を上げることを発表した。新聞業界の「横並び」の慣行からすると、毎日新聞や産経新聞など他の新聞も追随するのではないかとみられている。

一方で、読売新聞は3月25日の社告で、少なくとも向こう1年間は「購読料を値上げしない」と表明した。朝日新聞をやめて読売新聞に移る読者が続出するのではないか。そんな見方もある。

新聞の購読者たちは、1割以上の「価格上昇」をどう受け止めているのだろうか。

残念ながら、50代のウェブメディア編集者である私の周りには、紙の新聞を定期購読している人がほとんどいない。そこで、70代と80代の「新聞愛読者」に意見を聞いてみることにした。

5000円に迫る購読料では「コア層しか残らない」

「これはきついですね。5000円という雰囲気ですもんね」

そうため息をつくのは、メディア研究者の校條諭めんじょう・さとしさん(74)だ。

ネット時代の新聞の生き残り策について、長年研究している。この4月には、朝日新聞のオピニオンメディア「論座」に、これからの新聞社へ期待することを提言する記事を寄稿したばかりだ。

校條さんは生粋の新聞愛読者、新聞マニアと言ってもよい。毎日新聞の朝夕刊(デジタルを含む)を定期購読しているほか、朝日新聞と日経新聞、米ニューヨーク・タイムズのデジタル版も有料契約している。

そんな校條さんからみて、今回の新聞の値上げは衝撃が大きかった。

「コアな読者は残るでしょうが、ボロボロと離れていくんでしょうね」