「周囲の60、70代は購読をやめている」

校條さん自身は、たとえ毎日新聞が購読料を値上げしても購読を続けるつもりだ。しかし、周囲の60代、70代の友人たちをみると「新聞をやめている」。

「いまはみんなスマホを持っていますからね。スマホで、Yahoo!ニュースやLINEニュースやスマートニュースを読んでいる。新聞を取らなくても、ネットの無料ニュースで十分なんだそうです」

もう一つ、校條さんが懸念するのは、新聞以外の有料課金サービスとの競争だ。

「朝日の競争相手は読売ではなくて、ネットフリックスやアマゾンプライムといった情報サービスにお金を払っている人が多い。そうなると、新聞に月5000円も払えないという人も出てくるでしょうね」

「紙はやめてもいいが、デジタル会員になって」

新聞を取り巻く状況は年々、厳しくなっている。朝日新聞は2021年から22年にかけて約60万部減少した。23年3月の朝刊部数は376万部だが、数年以内に300万部を切るのはほぼ確実とみられる。

「紙」の新聞の衰退は避けられない情勢だ。だが、海外ではニューヨークタイムズなど一部の新聞がデジタル化に成功し、経営を好転させている。日本の新聞社の将来も、デジタル化の成否にかかっているという指摘は多い。

新聞各紙とその電子版をタブレット端末で表示したもの
写真=iStock.com/scanrail
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朝日新聞は今年から、紙とデジタルを合わせた総合的な媒体力を示す「メディア指標」を公表するようになった。そこでは、新聞の朝刊部数と同時に、デジタル版の有料会員数やネットのID登録者数、ウェブサイトのユニークユーザー数などが紹介されている。

今後は、このようなデジタル関連の指標をいかに伸ばしていけるかが、生き残りのカギとなるだろう。そんな時代の趨勢が朝日新聞の値上げ発表にも表れている、と校條さんは指摘する。

「朝日新聞の社告をみると、最後に『デジタルのみの購読プランもお選びいただけます』という言葉が入っています。これまでは販売店に遠慮して、紙面でこんなことは書いていなかった」

そこには「紙の購読をやめてもいいが、代わりにデジタルの有料会員になってほしい!」という新聞社の悲痛な願いがにじみ出ているというのだ。

実際、朝日新聞デジタルの購読料は「紙」よりもかなり安い。複数のプランがあるが、標準的な「スタンダードプラン」は月額1980円。紙の新聞の半分以下だ。

今回の値上げによって、「紙からデジタルへ」という読者の大移動が起きるかもしれない。長期的にみれば、それは新聞社の経営にとってプラスに働くのではないだろうか。