「朝日新聞の値上げは時期尚早」
「朝日は先走りじゃないかという気がするんですよね」
元毎日新聞幹部の佐々木宏人さん(81)はこう語る。
佐々木さんは経済部などで記者を経験した後、経済部長と広告局長を経て、中部本社の代表を務めた。新聞社の内情をよく知る佐々木さんからすると、朝日新聞の値上げは時期尚早に見えるという。
「現在、さまざまな物価が上がっていますが、今後、電気料金など大口の値上げが予想されます。そんな状況からすると、新聞も再び値上げしなければいけなくなる可能性がある。ならば、読売のようにしばらく様子を見てもよかったのではないか」
朝日新聞にはまだその余力があるのではないか、というのが佐々木さんの見方だ。
「僕は経営が厳しい会社(毎日新聞)にいましたからね。それに比べると、朝日は東京や大阪などの一等地にいい不動産をたくさん持っている。本当に背水の陣を敷くところまで追い詰められているのか、疑問なんです」
販売店は人件費高騰と広告収入減のダブルパンチに苦しむ
むしろ購読料を上げることで、新聞離れがさらに進み、各地の販売店にダメージを与えるのではないかと危惧する。
「新聞の部数がどんどん減っていく中で、各地の販売店が相当に傷んでいるように見えます。僕の近所でも、朝日や毎日の販売店が2、3カ所なくなりました」
人手不足を背景にした人件費の高騰で、新聞の販売店はどこも苦しい。さらに、コロナの影響で折り込みチラシの広告収入が大きく落ちているのではないかという。
かつては、新聞の部数が増えれば、販売収入と同時に広告収入も増えるという好循環の構造があった。いまはそれが逆回転している。
朝日新聞は今回、購読料の値上げと同時に、東海3県(愛知・岐阜・三重)で夕刊の配達をやめることも発表した。「販売店の夕刊を配る能力がなくなってきたという面もあるんでしょうね」(佐々木さん)
「僕は夕刊の愛読者で、企画ものの記事を読むのを楽しみにしています。でも、今の新聞社の状況からすると、夕刊の廃止は仕方ないのかもしれないですね」