安倍晋三元首相は、どんな人物だったのか。ライターの栗下直也さんは「下戸だが、上司や同僚からの飲みの誘いは断らなかった。マメで律儀な性格は議員になってからも変わらなかった」という――。(第2回)

※本稿は、栗下直也『政治家の酒癖』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

2015年4月28日、ホワイトハウスでの晩餐会に出席する安倍晋三首相(当時)
写真=AFP/時事通信フォト
2015年4月28日、ホワイトハウスでの晩餐会に出席する安倍晋三首相(当時)

菅義偉元首相の名刺に書かれていた「好きな食べ物」

新元号「令和」を菅義偉官房長官(当時)が発表した際の人気バンド「RADWIMPS」の野田洋次郎氏のTwitterが話題を呼んだのを覚えている人も少なくないだろう。

菅さんは俺の中学、高校時代の友達のお父さん。菅の家に泊まりに行くとお父さんが帰ってきてあれこれ酔っぱらいながら話をしてくれた。少し目が怖いけど優しい人だった

おお、野田洋次郎と時の官房長官が知り合いだったのかと驚いたが、菅氏を知る人は首をかしげたはずだ。

第99代内閣総理大臣 菅義偉(首相官邸HPより)
第99代内閣総理大臣 菅義偉(首相官邸HPより)

菅はからっきしの下戸で名刺の裏にかつて「アルコール:全然ダメ」、「好きな食べ物:甘いもの・めん類」と記したこともある。

のちに菅氏自身が文春オンラインのインタビューで「私、子どもたちが集まっていると、『おいっ! ちゃんと勉強してるか』とか言いながら肩を組んで、必ず会話の中に入っていくわけです。うちの子が『だめだ、だめだ』と言うんですけど。真面目な話は全然していない(笑)。だから酔っぱらって見えたのかもしれないな」と振り返っている。

下戸が甘党であることはよくある。菅氏も首相就任当初、「3000円のパンケーキ」を食べている姿が批判されたが、3000円を握りしめて酒を飲みにいってどれくらい飲めるかと考えれば、一国の宰相にそれくらいの自由を許してもいいだろう。

2日に1度は訪れていた場所

めん類が好きというのは、素早く食べられるからという理由だ。食事にあまりこだわりがないのは、毎日の「首相動静」からもうかがえる。

首相動静は首相がその日にいつどこで誰に会ったかが記されている。菅首相が2020年9月16日に就任して以降1カ月(正確には10月13日まで)の動静を調べると、食事や会食が決められた場所で行われているケースが多い。

最も多いのが、赤坂のザ・キャピトルホテル 東急のダイニング「ORIGAMI」。終日利用できることもあり、朝食がてらの会食や昼食、夕食を問わずに利用している。その回数は14回。1日に1回の利用として単純計算すると2日に1度は訪れている計算になる。

赤坂の議員宿舎から近いとはいえ、同日の昼夜に行くこともあれば、朝に食事して夜の会食の後に秘書官と再度訪れることもある。ちなみに食べログの☆は3.55だ(2022年10月5日時点)。