満開が早まると花見の趣旨も変わる

花見は時期、内容、社会からの監視という3点で変化している。

まず時期だ。

気象庁は「気候変動監視レポート2022」で、日本国内の桜の開花日について、次のように発表した。

「1953年以降、さくらの開花日は、10年あたり1.2日の変化率で早くなっている」

また、同レポートには1990年平年値(1961~1990年)と2020年平年値(1991~2020年)を比較している。平年値とは30年間の平均の値だ。

平年値を見ると、主な都市における桜の平均開花日も早くなっている。東京、大阪、新潟、青森の平均開花日は5日、仙台、名古屋、広島、福岡では6日も早くなった。

つまり、1960年から90年まで、東京で桜が満開を過ぎるのは4月の第1週、小学校の入学式頃だった。それが現在では3月の終わりには満開だ。

そうして開花時期が早まると花見の趣旨は変わる。

会社で花見をやる場合、4月初旬だったら、新入社員の歓迎会だ。ういういしいスーツ姿の若者が宴に出てくる。がばがば酒を飲むことはまずない。一方、3月の下旬にやるのであれば年度末の、おつかれさま会になる。

入社予定の新人も参加するかもしれないけれど、おつかれさま会、歓送迎会であれば、へべれけになるまで飲む人も出てくるだろう。荒れた花見になって、周囲からクレームが出ることもある。

上野公園の桜
写真=iStock.com/y-studio
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内容は豪華になったが、SNSで晒されることも

ふたつめは花見が豪華になったことだ。かつてのそれはナッツ、ポテトチップスといった乾きもの、玉子焼き、稲荷ずし、焼き鳥、コロッケといったつまみで、缶ビールやコップ酒を飲むのが一般的だった。

それが今ではバーベキュー、焼きたてピザ、寿司、といった豪華なものが出てくる。ウーバーイーツなど配送サービスも一般化した。また、イベント会社が花見の設営を請け負って、場所取り、幔幕まんまくの設置から豪華メニューの配達までを行うこともある。参加者は身ひとつで行くだけ。花見の幹事がいてもやることはない。

3つめの変化は社会の目が厳しくなったことだ。豪華なつまみやカラオケの登場で盛り上がるのはいいけれど、まわりの人々がスマホを持っているわけだから監視されているなかで宴会を行うことになる。迷惑になる行為をしたらたちまち写真や動画をSNSで投稿されて炎上する。ときには花見が中止に追い込まれることだってある。