非公式な社内行事が監視される時代

コロナ前のことだが、横浜、桜木町駅近くにある桜の名所、掃部山かもんやま公園ではある会社の花見が問題になった。大手エンジニアリング会社はマナーが悪くて途中で中止になった。大手建設会社のそれはSNSで炎上した。

エンジニアリング会社は公園のほぼ3分の1の面積にブルーシートを敷き、しかも無人で場所取りをした。さらに使用期間を5日間と貼り紙した。それでは他の花見客の憤激を買うに決まっている。このケースは会社が知ることとなり、途中からブルーシートは撤去された。

大手建設会社の場合はイベント会社が代行して場所取り、投光器などを設置した本格的な野外パーティー会場にしてしまった。花見は挙行されたがやはり周囲の客が社名を特定してSNSに投稿、炎上した。

「花見なんて従来通り、総務部が管掌すればいい」
「営業部の花見ならいつもの通りのやり方で新人にやらせておけ」

一般の会社は花見について、それほど気にかけてこなかった。他人の目を意識してこなかった。社内行事のひとつではあるけれど、公式のそれではないと軽く考えていたのだろう。だが、誰もがSNSを使う時代、世間の目がある場所での行いは厳しくチェックされるようになったのである。

花見の幹事を完璧にこなした人間は出世する

その点、トヨタの花見は違う。

花見のような行事についても、ちゃんと他社の目を意識している。そして、しっかりと準備して、変化にも対応している。花見だからといって手を抜かないのがトヨタだ。気構えが一般の会社とは違うのである。

さて、3月末に出す『トヨタがやらない仕事、やる仕事』(プレジデント社)には花見の幹事がやることについても書いた。

コロナ禍で3年ぶり、4年ぶりに花見を行う会社もあるだろう。トヨタが花見をどう考えているかを知ってから満開の桜を見に行っても遅くはない。

――会議の延長にあるのが社内行事です。社員旅行、駅伝、懇親会、送別会、部内の花見……。コロナ禍で開催はがくんと減りましたが、トヨタは現場がある会社ですから社内行事や飲み会が多い会社だといえます。

お花見のシーズンになると、豊田市にある本社や各工場の人たちは市内の水源公園でお花見をします。

トヨタでは「雑事が大事」とされていて、お花見でも日ごろの業務と同じように担当者が決められます。歴代の幹事がブラッシュアップしたマニュアルを元にして、飲食の手配から場所の確保までさまざまな仕事をすることになっています。

そして「花見の幹事を完璧にこなした人間は出世する」という伝説もあります。

では、どんなことをやるのか。幹事経験者で役員に出世した人の話を紹介します。