人は言い伝えや過去の事実に影響されやすい
データサイエンスマインドとはデータをしっかり見て必要な分析ツールを使い、常識や認知バイアスにとらわれずに物事を判断していく姿勢です。本書ではサイエンスをベースに論理的な考え方をしていくマインドとしましょう。
そこで基本になるのが、まずデータで確かめるという習慣です。接した情報を数字で確かめる癖をつけてください。データの裏付けを取らないままに情報を鵜呑みにすると、認知バイアスに引きずられて誤った恐怖感を抱くかもしれません。
たとえば自動車事故と飛行機事故での死亡確率を考えたとき、なんとなく飛行機の方が危なそうに感じられます。しかし、統計の処理の仕方にもよりますが、ある期間の延べ移動距離に対する死者の比率を比較すると実際は逆だと言われています。前提や環境が全く違うにもかかわらず、言い伝えや過去の衝撃的な事実が、私たちの認知に影響してしまうことはよくあるのです。
またメディアもそれに引きずられる傾向がありますし、いい加減な発言をしている評論家や専門家や政治家にも騙されてしまいます。
SNSが思考の偏りに拍車をかけている
「暴力的なゲームが影響して少年犯罪が増えている」「活字離れで読書をする人が減っている」「最近はキレる高齢者の比率が高まっている」など、わかりやすいが間違っている例としてよく挙げられます。
また「アリゾナ効果」といった一見もっともらしいが実は誤りというのもあります。アリゾナとはアメリカのアリゾナ州のことであり、有名なグランドキャニオンや砂漠が広がる乾燥した暖かい州ですが、その州では結核で死亡する人の数が非常に多くなっているのです。結核患者にとっては良い気侯のはずのアリゾナ州の結核死亡者数が他のもっと寒い州より多く、その統計だけを見ると「結核死亡者は乾換した暖かい地域に多い」といった結論を出しかねません。
これはもちろん間違いで、結核患者にとって気侯のよいアリゾナゆえに、結核療養所などが多く、死亡者も多くなっているだけです。サイエンスマインドとはこのように一見もっともらしいことを疑う心なのです。
最近ではSNSの利用が進んだ結果、「フィルターバブル」(レコメンデーションされるニュースや記事ばかり見ていて発想が固まってしまう)や「エコーチェンバー現象」(同じような考えの人同士が固まってSNSで共感しあうことで他のグループの意見を受け付けなかったり攻撃したりする)なども起きてきて、社会の分断に拍車をかけています。