センセーショナルな見出しや数字で判断しない

これらもやはり事実を広くみてきちんと把握しない習慣によるものといえます。数字を確かめることで、事実をきちんと認識し、惑わされないことは、ネット社会でありかつ瞬時に判断が求められるスピード社会であるがゆえになおさら重要になっています。

同様に、統計学的な考え方も重要です。世の中にはいろいろな調査が出回っていますが、母集団や指標の取り方1つで異なる結果になる、という認識が必要です。

就職率や失業率、食料自給率、貧困率などを調べてみると、通常想定する定義とは違うことが多々あります。センセーショナルな見出しや数字だけで判断せず、定義にさかのぼる癖が大切です。また、調査結果の全体の総括だけではなく、個別の項目に目を向ける必要もあるでしょう。

例えば、スイスの国際経営開発研究所(IMD)では世界デジタル競争力ランキングを発表しており、その中で日本のランキングが低下していることが指摘されています。「日本は29位に低下」という情報だけでがっかりしたり諦めたりするのではなく、どのような分野でどのような評価手法が採用されているのかを調べてみると、具体的に何が弱いのかを掘り下げ、対策を考えることができます。

ちなみにこのIMDのランキングでは、デジタル技術の活用を知識、技術、未来への備えの3点から評価し、その下に9つのサブセクターと54の小項目が設けられています。エクササイズとして、実際の一次データを一度自分自身の目で確かめてください。

プログラミングしない人でもAIの知識は必要

AIについても毛嫌いせずに学びましょう。これは、プログラミングのスキルを習得してください、と提案しているわけではありません。AIとは何か、どのように動くのか、といった基本的な理解を身につけるということです。AIの本質や機能を理解した上でなければ、AIを活用して何を実現したいのかという発想は生まれてきません。

このような分野に親しむこともデータサイエンスマインドを育むことにつながるでしょう。その意味では真剣にAIの勉強をする(または諦めて放棄してしまう)のではなく、仕組みを知ってどう活用するかを考えるのも立派なサイエンスマインドです。野口竜司氏の著書である『文系AI人材になる』(東洋経済新報社)は、プログラミングまでは薦めていませんが、活用方法を知ってアイデアを出していく勇気が生まれるのでおすすめです。

食わず嫌いせずに数字やデータに親しむこと、「本当かな?」と考えて根拠を探すことがデータサイエンスマインドの基本です。

「本当かな?」と思う癖は日々のニュースで鍛えられます。