どうすれば論理思考を身につけられるのか

たとえば、「博士号を取得しても就職先がなくて日本の知識力や技術力の将来が危ぶまれる」という記事があったとき。確かにその通りだと思いますが、そこで「そうだそうだ」で終わってしまうのではなく、「でも成功した人もいるのでは? その人たちとの違いは? 博士課程以外に日本の知識力や技術力を鍛える方策は?」などと考えを広げてみてはどうでしょうか?

また「欧米は進んでいる」と対比される場合が多いですが、「欧米での課題はないのだろうか?」と疑問を持つことも事実を調べるきっかけになります。

論理思考(ロジカルシンキング)の手法としては、ピラミッドストラクチャー、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:漏れなくダブりなく)、フレームワーク思考の3つが代表的なものです。

いずれも論理分析的にものごとを区分けして考えていく筋道を示します。まずはこのような手法に親しみ、自分が何かの計画を立てる際に当てはめてみましょう。

批判的思考(クリティカルシンキング)も重要です。

何かの情報に接した時に、前提は何か、隠れている事実はないのかを批判的に考えていくことです。当たり前だと考えられるようなことでも、「なぜこの人はこういう発言をしているのだろう」「なぜこの制度は変わらないのだろう」と一度立ち止まって考える癖をつけてください。

例題1:貴重なクロマグロを保全するためには?

論理思考や批判的思考を鍛えるのにもニュースが使えます。1つのやり方をご紹介しましょう。例えば次のような記事があったとします。読者のあなたはこの記事に対して、どんな質問を投げられますか?

質問とは、定義はなにか? どのように問題全体を把握し、どの部分の話をしているのか? 出ている数字以外はどうなっているのか? 対策はそれだけか? などの論理思考の3つの切り口を通して質問を作るのです。

「マグロのなかでも最高級のクロマグロは近年、太平洋でずっと減り続けている。この貴重な資源を守る国際機関の小委員会が、3歳以下の未成魚の漁獲量を来年は15%以上減らすことで合意した」

●質問例
・他の魚も同じようではないのか? マグロ以外は考えなくていいのか?
・近年とは? どのような変化が何年の間に起きているのか? その理由は?
・国際機関の小委員会の構成国は? どういう力関係や利害関係か?
・なぜ3歳以下の未成魚だけか? そもそも3歳以下とはどうやって測るのか?
・来年、15%以上減らすだけでいいのか? その根拠は? 今後は?

論理思考のエクササイズとして、フェルミ推定を実践するのも面白いでしょう。フェルミ推定とは、一見すると分からなさそう、調べられなさそうなことを論理的に推定してざっくりした答えを引き出そうとするものです。

マグロ
写真=iStock.com/urf
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