執行前の死刑囚は死刑についてどう考えているのか。ジャーナリストの宮下洋一さんの著書『死刑のある国で生きる』(新潮社)より、家族3人を殺害したアメリカ人死刑囚のインタビューをお届けする――。
手錠をかけられた手
写真=iStock.com/ViewApart
※写真はイメージです

家族3人を殺害した「真面目な男」ハメル

1975年11月4日、ジョン・ウィリアム・ハメルは、テキサス州中北部タラント郡のアーリントンに生まれた。子供時代は大人しく、誰に迷惑をかけることもなく成長した。思春期になっても友人からは「真面目な男」と言われ、悪行を働くことは一度もなかった。海兵隊時代にも、規律正しい行動で、上官との関係も良好だったという。

テキサス北部地区フォートワース地方裁判所の記録(2018年1月3日発行)に目を通してみると、事件の詳細と証人尋問や情状証人の証言内容が綴られている。

2009年12月17日、タラント郡の一家で、悲劇は起きた。当時、病院の夜間警備員だったハメルは、仕事を終え自宅に戻ると、妊娠中の妻ジョイ・ハメル、5歳だった娘のジョディ、義父のクライド・ベッドフォードの3人をバットやナイフで殺害した。その後、自宅に火をつけ、その場を立ち去った。死亡した3人の気道にすすが検出されなかったことから、放火の前に絶命していたことが分かっている。

事件前の10月から12月にかけて、ハメルは職場への道中にあるコンビニの女性店員と親密な関係を結ぶようになった。彼は既婚者であると告げていたが、携帯から頻繁にメッセージを送信するようになり、同じく既婚者であった女性は、夫と離婚の協議中にあることを伝えた。

2人は事件の1週間前、性行為をした。妻の妊娠を女性に明かしたハメルは、情事の継続を拒否されたが、電話やメッセージの送信を繰り返した。そして、事件の前日、女性から離婚が成立したことを知らされた。

事件当日、警察や消防隊が現場で消火作業にあたる中、ハメルが姿を現した。赤の他人を装い、警察に話しかけた。しかし、後の捜査で、彼の服から血痕が見つかり、犯人の特定につながった。