いつまでも健康で若々しい脳を保つにはどうすればいいのか。脳科学者の茂木健一郎さんは「お金を稼ぐことだ。それにより社会とのつながりが生まれ、脳を活性化できる。収益の多寡は気にしなくていい」という――。

※本稿は、茂木健一郎『脳は若返る』(リベラル社)の一部を再編集したものです。

脳を若々しく保つ秘訣はお金を稼ぐこと

シニアの方々の中には、「この歳になったら稼げる機会なんてない」「年金だけが頼みの綱だ」という方もいるかもしれませんが、それではアクティブシニアには程遠いといえます。「たとえ何歳になってもお金を稼ぐ!」という心意気こそが、いつまでも脳を若々しく保つ秘訣ひけつでもあるからです。

脳、電球、札束
写真=iStock.com/NosUA
※写真はイメージです

また、「いかにお金をかけないで、老後の社会活動を充実させるか」というのは生きるうえでの知恵ではあるわけですが、社会との接点や人間関係のサークルが増えるアクティブシニアになればなるほど付き合いも増えるので、当然ながら出費もかさんでいきます。

その一方で、アクティブシニアのもうひとつの特徴として、単にお金を出費するだけでなく、お金の入りについても考えて興味を持っていることが挙げられます。ソーシャル・コネクションを増やしているアクティブシニアには、頻繁なお金の出入りがあるということ。

シニア世代においてこのお金の出入りがあるというのは、脳科学的にも重要なことだと私は提唱しています。これがどのようなことなのか、順を追って説明していきましょう。

「年金を有効活用」だけでは寂しい

まず、シニアとお金の関係性を語るとき、どうしてもこれまでの貯蓄をどう切り崩して生きていけばいいのか、あるいは年金を有効活用するにはどうすればいいかという議論が持ち上がりがちですが、私はそうした考え方だけでは寂しいと感じてしまうのです。

なぜなら、自分の蓄えは別として、何歳になっても出るお金もあれば入るお金もある。それこそがアクティブシニアの生き方の真骨頂でもあるからです。

少しだけ私の話をすると、私は脳科学者として自分軸のようなものは持っていますが、このように本を執筆したり、テレビやラジオなど多岐にわたって仕事をしています。そうしたあらゆる仕事で得た経験は回り回って脳科学の研究に役立っているのです。

シニアの皆さんにも、これまでの経験で培った知識やスキルをほかのことに活かすことがきっとできるというのが私の考え方です。