健康長寿のためにはなにをすればいいか。老年医学の専門医である和田秀樹さんは「長生きしたければテレビは捨てたほうがいい。最大の問題点は『人を座らせたままにする』ことにある」という――。(第1回)

※本稿、和田秀樹『テレビを捨てて健康長寿 ボケずに80歳の壁を越える方法』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

ソファに座って自宅でテレビ番組を見ているシニアカップル
写真=iStock.com/simonkr
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収入や学力などの格差よりも残酷な「健康格差」

長生きしたければテレビを観るな、というのは、本当です。今後、国民全体の3人に1人が65歳以上となる超高齢社会が訪れたとき、今まで通りにテレビにかじりついている人は、間違いなく「健康格差社会」の底辺に転落してしまうでしょう。「健康格差」は、ふんわりと語られることの多い格差社会という概念の一面です。

「格差社会」というと、まず頭に浮かぶのは「金銭的収入の格差」かもしれません。続いて、そこにつながる「学力(学歴)の格差」、その大元と目される「親ガチャ」こと「両親や生家の資産をめぐる格差」が論じられるというのが一般的だと思われます。けれども、金銭的収入の格差と並び立つほど「個人」を際立たせる本当の格差は、もっと別の角度からも見るべきではないでしょうか。私は、それこそが「健康格差」だと考えています。

健康の格差は、ある場合には、学力の格差以上に残酷な「結果の格差」をもたらしてしまうからです。たとえば学力について、かなり優秀な人とまったく勉強のできない人のIQのギャップは、どれだけ大きく開いてもせいぜい70から130ぐらいの幅に収まります。しかし、これが健康を尺度にすると、まったく変わってしまうのです。特に「健康格差」が色濃く出てくる65歳以上の世界でいえば、そのギャップは天地ほどの差が生まれてしまいます。

歩ける人、歩けない人。自分ひとりで生活できる人、そうでない人。好きなものが食べられる人、病院食しか食べられない人、点滴でしか栄養をとれない人。つまり、高齢者の世界では身体能力や脳機能といった点で、収入格差と同じぐらい、個々人の人生を左右するのが「健康格差」だということです。