テレビによって聴覚は深刻なダメージを受けている
最近は、同居人への配慮や集合住宅という事情から、ヘッドフォンやワイヤレススピーカーで、テレビ番組の音を聴いている人も少なくないようです。確かに、ヘッドフォンで周囲の音を遮断したり、顔のすぐ近くに置いたワイヤレススピーカーで音を出せば、誰にはばかることなく、大音量でテレビ番組を楽しむことができるかもしれません。
しかし、こうしたやり方を続けていると、耳には次第にダメージが蓄積されていくことは忘れずにいてください。
「テレビの音」は、構造としては「空気の震え」です。その振動が耳に入って鼓膜を揺らします。そして、揺らされた鼓膜につながる蝸牛(内耳)が、届いた振動を電気信号に変換して脳に伝えます。そこで初めて、私たちは「空気の振動」を「音」として認識するのです。その一連のプロセスのなかでもっとも大切なのが、蝸牛の中にあって振動を電気信号に変換する「有毛細胞」です。
この有毛細胞は、加齢に伴って少しずつ破壊されていくため、高齢者は耳が悪くなってしまいます。ただし、有毛細胞を破壊する一番の敵は「加齢」ではありません。加齢よりも耳に悪いのは、「長時間にわたる強い刺激」です。突発的に大声を張り上げたり、のべつまくなしに背景で音楽が鳴るテレビ番組を聴き続けていると、皆さんの耳から加速度的に聴力が失われていく結果を招きかねません。
また、聴こえにくいからといってテレビの音量ばかりを上げていると、今度は日常生活における他人との会話の音量に対応できなくなってしまうでしょう。聴覚にとっては、テレビ番組のような「だらだらと永遠に続く刺激」は悪影響しかありません。
「理想のウエスト」が手に入るかどうかは骨格で決まってしまう
テレビばかり観ていると、運動量が激減して下半身を中心とした「筋力の低下」を招き、その結果、「歩行の異常」が生じます。そのサイクルは、先の「テレビの前で座りっぱなし。動かなくなる下半身」の項目に記した通りです。
他方、読者の皆さんにあまり馴染みのないチェックポイントは「体重の減少」でしょうか。世間には、未だに「できるだけ痩せているほうが良い」という「誤った考え方」が根強く、若年層から高齢層までおなかが出ていることを恥じています。その謎の羞恥心を捏造しているのが、テレビです。
私は医師として、この「ウエスト58cm幻想」を絶対に許せません。まず最初に、ウエストのサイズは――各自の身体に備わった肋骨の形状に左右されるので――努力のみで減るものではありません。肋骨の形状が生得的に開いている人は、どれだけ苛酷なダイエットをしても、ウエスト58cmにはならないのです。もうこれだけでも、ウエスト幻想の悪辣さを理解していただけるでしょう。