ストレスを発散するにはどうすればいいのか。脳科学者の茂木健一郎さんは「走るのがいい。特に旅先でのランニングがお勧めだ。身体的にも精神的にも便益が非常に多い」という――。(第2回)

※本稿は、茂木健一郎『脳は若返る』(リベラル社)の一部を再編集したものです。

BRAINと書かれたダイス
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ストレスに弱い脳科学者がした“あるマインドセット”

ストレスについては私には苦い経験があります。

30歳くらいまでは人間関係を築くことが苦手でした。そのせいで知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまっていたのです。

あるとき、健康診断でお医者さんに心臓の音がおかしいといわれたことがありました。ところが精密検査を受けると、特に異常はありません。お医者さんが首をひねって、「君、ストレスを溜めやすい性格なんじゃないの?」といったことを今でも覚えています。

そもそも、人間関係とは大抵思うようにはいかないもの。そんなときに、自分が本来コントロールできないことまでコントロールしようとすると、どうしてもストレスが溜まってしまいます。自分が直接どうこうできないことなのだから、あきらめればいいのに、なかなかそれができない……。結果として、さらにストレスを溜め込むという悪循環に陥ってしまっていたのです。

そこで私は、このようにマインドチェンジすることにしました。

「自分で努力すれば何とかコントロールできることと、どう頑張ってもコントロールできないことに分ける。前者についてはベストを尽くす。後者については潔く諦めればいい」

ストレスを溜めている人の特徴

例えば、こんなことがありました。

私が好きになった女性がいましたが、その人も私を好きになって相思相愛になるとは限らない。好かれようとベストを尽くすことはできますが、相手が自分を好きになるかはコントロールできない。好きになってくれればラッキーだし、なってくれなければ仕方がないと諦めるしかない。そう考えると、とても気持ちが楽になったのです。

それからというものの、人間関係に限らず、どのようなことでもこう考えることで気持ちが楽になりました。

わかりやすいのは、天候や経済の動きなどは自分がコントロールできないことです。それは最初から諦めて、自分がコントロールできることだけに集中すればいいのです。

私の周囲の人間を観察してみても、ストレスを溜めている人は、自分でコントロールできることと、できないこととの「仕分け」に失敗している人が多いと感じます。かつての私がそうだったように。

でも、自分がコントロールできることについてはベストを尽くし、コントロールできないことについては諦める。このような仕分けさえできていれば、脳はすっきり働いてくれるので、人生のストレスは大幅に軽減できるというのが、私が考える脳科学的ストレス撃退法なのです。