ウォーキングでも効果あり

普段、私たちは常にパソコンやスマホなどを通して大量の情報に接しているわけですが、そのため多くの記憶が未整理のまま脳に残ってしまっています。ランニングをしているときは、スマホを見たり作業をしたりできないため、結果として頭が空っぽの状態をつくりだすことができます。それによって、記憶が整理されるだけでなく、ストレスも解消される効果があるのです。

そこで、ぜひシニアの皆さんも脳を活性化させるためにランニングを習慣化してみてはいかがでしょうか。デフォルト・モード・ネットワークはゆったり15分程度走ることで働き始めるので、それほど無理なく続けられるはずです。もし、ランニングがきついということであれば、30分程度のウォーキングでもいいでしょう。

ウォーキングは「歩く座禅」ともいわれ、ランニングと同じようにデフォルト・モード・ネットワークが活性化することがわかっています。

脳科学者が推奨する最高の脳トレ

私が推奨しているのが、旅先で走る「旅ラン」です。

旅ランとは「旅×ランニング」を略したもので、その名の通り旅行先や出張先でランニングを楽しむこと。もちろんストレス解消にも役立ちますし、先に述べたデフォルト・モード・ネットワークを活性化させることができます。

旅ランは、見たことのない景色のなかで走ることになるので、いい具合に新鮮な情報が入ってくる。これが先に述べたノイズになるわけです。

ジョギング
写真=iStock.com/martin-dm
※写真はイメージです

旅行好きのシニアも多いと思いますが、観光名所を訪問するにしても、クルマや公共機関だけでは“点”でしか印象に残りませんが、自分の足で走ってみれば、その土地の魅力を“線”でつなぐことができます。

私は仕事で出張することが多いのですが、行った先では必ず走るようにしています。これまでに走ったコースは、カナダのバンクーバーや、私が旅ランのベストコースだと断言しているケンブリッジ大学の近くにあるグランチェスター・メドーなど、国内外200カ所を超えました。

見知らぬ地を走る旅ランには魅力がいっぱい。そのひとつは何といっても「セレンディピティ(思いもかけなかった偶然がもたらす幸運)」に出会えることです。それは人だったり、お店だったり、動物だったり、風景だったり、その土地の文化だったりとさまざま。そういうなかに、意外な発見や学びがあったりするのが旅ランなのです。

そうしたセレンディピティに出会うため、私が旅ランをやるときは事前に地図を眺めて「どこを走ろうか」と綿密に計画するのではなく、ある程度のルートを決めて走ってみて、「予定とは違うけれど、こっちのほうが景色がいいからこっちを走ろう」などと気ままにコースを変更してしまいます。

すると、たまに小路に迷い込んでしまうようなこともありました。そんなときには、慌てずにそのあたりを探索してみると、ガイドブックやネットにも載っていないような素敵なレストランが見つかったりして、食事をしてみると大当たりなんてこともありました。

こうしたセレンディピティは、車や自転車などの乗り物で移動するだけではなかなか出会うことができないものです。なぜなら、つい見落としてしまいがちなその土地の魅力を、ランニングという速度だからこそ拾い上げることができるからです。

このように、決まったルートもなければ、自由気ままで堅苦しいルールもないのが旅ランの魅力であり、10人いれば10通りの旅ランがそこにあります。