「年齢を重ねれば性格が穏やかになる」というのは本当なのか。医師の和田秀樹さんは「40代を超えると脳の前頭葉が萎縮し老化が始まる。脳が老化するとむしろ些細な出来事でキレやすくなり、感情のコントロールが効かなくなる」という――。

※本稿は、和田秀樹『70歳80歳を笑顔で超える生き方』(さくら舎)の一部を再編集したものです。

脳障害
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「キレやすい」のは若者だけでない

「キレやすい」といえば、「ムカつく」とともに、若者の特権であるかのように思われている。最近ではむしろ高齢者に多い。

ところが、その一方で、そういう若者を見て、マジ切れし、ムカついている中高年が少なからずいる、ということも事実なのだ。なにも若者だけの現象ではあるまい。

問題なのは、それなりに人生経験を重ねてきて、分別をそなえているはずの人が、自分の感情をコントロールできなくなって、いつまでも怒りつづけているという点だ。若者たちは、次の瞬間にはもう忘れて、べつのところに興味を移してしまっているというのに。

中高年になって、とくに脳に動脈硬化や小さな脳梗塞をいくつも起こしている人は、キレやすく、いったん怒りだすと、怒りがなかなかおさまらなくなることが多くなる。こうした現象を、精神医学では「感情失禁」という。感情が漏れ出てきて、それを抑える術がない状態だ。

記憶力や体力より先に衰える「感情」

よく昔から、「人間、年をとればとるほど丸くなる」とか、「角がとれる」とかいわれ、そうした状態を表現する「好々爺こうこうや」なる言葉もあるほどである。

だから、一般的にはそうしたイメージが強いと思われがちだが、「頑固ジジイ」の言葉どおり、年をとったらむしろキレやすく、怒りっぽくなるという事例は、世間一般にもかなり広く見られる現象なのである。

みずからを振り返ったとき、「最近、些細なことでむしょうに腹が立つようになった」と感じることはないだろうか。

40代後半から50代あたりで管理職になると、「部下の些細なミスが許せない」「若いやつらの言葉遣いが気に食わない」など、それまでは許容できたことが、やたらと癇にさわるようになってきたとは思わないだろうか。

もし思い当たることがあるなら、感情のコントロールができにくくなっている証拠だ。老化が進んでいることに思いいたるべきだろう。

老化といえば、記憶力の衰えが最初にくると思われがちだが、それは実感しやすいからそう思うだけで、じつは記憶力よりも、さらには体力よりも、もっとも先に衰えてくるのが、感情なのである。