走ることは脳にとっていいこと尽くし

「健康のために毎日走っている」

そんなシニアがどれくらいいるのでしょうか。

ランニングをするシニアが増えているそうですが、ゆっくりと自分のペースで走るランニングは、ふだん運動をしていないシニアでも気軽に始められる運動のひとつです。

ある研究データによると、定期的に走っている人はストレスレベルが低く、認知症の発症率も低いそうです。

私は運動のなかでも走るということを長年大事にしていて、よく周りの学生には、「俺はフルマラソンを走れているうちは大丈夫だ」と公言しています。なぜ、私が走るということを大事にしているのかといえば、脳科学的にもいいこと尽くしだからです。

まず、「ランナーズハイ」と呼ばれる爽快感は、エンドルフィンやフェネチルアミンなどの脳内物質が放出されることで生み出されます。そうした働きに加え、脳の回路の働きもランニングによって促進されるのです。

ランニング
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なぜ経営者はランニングを好むのか

特に、脳がアイドリングしているときに活性化される「デフォルト・モード・ネットワーク」の活動について、近年の脳科学の研究でわかってきました。

デフォルト・モード・ネットワークとは、脳が特定の課題に取り組むのではなく、いわば「ぼんやり」しているときに働き始め、記憶を整理したり感情を整えたりする機能があると考えられています。

わかりやすくいうと、自動車のアイドリングのような状態のことを指します。例えば、ぼんやりしているときに何かを思い出したり、アイデアがひらめいたりといった経験はありませんか。

人間の脳というのは、何もしていないときにこのデフォルト・モード・ネットワークが活性化し、脳のメンテナンスや情報の整理をおこなっていると考えられています。

ただし、「何もしていない」といっても、完全に思考や行動を遮断すれば、逆に脳は不安を感じ、特定の部位が活動しはじめてしまう性質を持っています。つまり、デフォルト・モード・ネットワークを働かせるには、適度な“ノイズ”が必要で、そのノイズ的な役割を担うのがランニングなのです。

企業の経営者やアクティブに働く人でランニングを習慣化している人は多いのですが、彼らは健康やストレス発散のためだけでなく、こうした脳のベネフィットも大きいことを知っているのです。

私自身も、時間が許す限り1日に10キロ走っていますが、これが脳のメンテナンスにとって不可欠なものになっています。走ってこそ、忙しい毎日をストレスなく乗り越えていくことができていると実感しています。

なぜなら、デフォルト・モード・ネットワークという回路は、脳が特定の課題に取り組むのではなく、いわば「ぼんやり」しているときに働き始め、記憶を整理したり感情を整えたりする機能があると考えられているからです。