夫は現時点で処刑されてはいない模様だが、地下室に監禁されたようだ。メデューサによると戦闘をためらった21人が監禁され、「食料も(着替えや石けんなど)衛生用品も与えられていない」と報じている。

動員令から2カ月で「多大な犠牲」が発生

前線は混乱状態にあり、ロシア軍は「多大な犠牲者」を生じているとの指摘が出ている。

ハフポスト英国版はイギリス国防省による分析リポートをもとに、「ロシア大統領が『部分的動員令』を発令してからわずか2カ月で、動員された予備役らが『訓練不足』のまま召集されたことが明らかになった」と報じている。

英国防省によると動員された予備役は、全員ではないにしろその多くが以前兵役に就いていた経験を持つ。大半は何かしらの「深刻かつ慢性的な健康上の問題」を抱えながら前線に送り出されており、事前のメディカルチェックも形骸化している模様だ。

メデューサは、予備役のなかから召集される順序について、「公式に定められた召集の優先順はないものの、最も必要とされる軍事スキルを備えた人材が優先される」と解説している。

自然と戦地で戦闘を経験した人物に召集命令がかかる形となっており、前線に配置されてから不調や古傷に苛まれるケースが増えているようだ。

無謀な動員が示す「プーチンの戦争」の限界

プーチン大統領が仕掛けたウクライナ侵攻は、ロシア側にさえ不利益をもたらしている。国際社会からの信用を毀損きそんしただけでなく、国民のあいだには戦地へと送られる不安が広がっている。

息子や夫がいつ徴兵されるか知れず、仮にそうなれば24時間以内に連れ去られるのだというストレスは、市民にとって多大な心的負担を生じている模様だ。

現時点で前線に送られたことが判明しているのは予備役が中心だが、秋の徴兵で入隊が決まった新兵も気が気ではないことだろう。制度上、徴兵から1年後には予備役として登録されることが確定している。侵攻が長期化すれば、来年の今頃には戦地に送られているおそれも皆無ではない。

そのほか一般国民の生活においても、国内産業の弱体化がいずれ影を落とすことだろう。鉱業や自動車産業、ひいては航空業界からも技術者が引き抜かれ、戦場で慣れない銃を握らされている。

こうして、産業に従事してきた優秀な技術者たちが社会の中心から消えていっている。国際的な経済制裁によりロシアの自動車産業はすでに風前の灯火ともいわれるが、他の産業においても人材の質と量はいずれ顕著に低下することだろう。

ウクライナへの長引く軍事力行使はもはや10カ月目に突入しており、年単位での長期化も現実味を帯びてきた。生活を破壊されたウクライナ国民の苦しみはもちろんのこと、ロシア国民にとっても害をもたらすばかりの無益な武力行使となっている。

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