一時は売り上げの3分の1を失ったが…

行政処分は、企業ブランドを毀損きそんし、取引先との関係やエンジニアの採用などにも影響が及ぶ。アクサスの場合も、このダメージにより売り上げの大きな減少、さらには退職者の増加などが進むことが危惧された。

巨大な嵐を連れてくる雲
写真=iStock.com/petesphotography
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ここでアクサスは、行政処分を契機にビジネスモデルの転換を図る。一時は売り上げの3分の1ほどを失うことになったが、現在は成長基調を取り戻している。そして新しいビジネスモデルに移行した結果、アクサスは収益性を高め、2021年9月期決算において過去最高の事業利益(一般的な会社の営業利益に相当する)を達成している。

ビジネスは複雑であり、危機が新たな機会をもたらすことも少なくない。行政指導を受けるという危機を経て、アクサスはより収益性の高い健全な企業として再生を果たしたのである。

危機の前から始まっていた経営改革への取り組み

なぜアクサスは、行政処分という向かい風を、短い期間で、事業を前進させる追い風に転じることができたのか。時計の針を少し戻すと、アクサスはこの危機に先立つ時期に、中長期の発展をめざす企業体になるべく経営改革に取り組んでいた。

2007年の設立後からしばらくの間、アクサスにとってSESは自社の成長段階に合致した事業形態だった。期首に強気の売り上げ目標を定め、これを重要業績評価指標(KPI)とした管理を行っていれば、ある時期までは順調に事業を拡大できた。一方で、エンジニアをはじめとする社内のスタッフの働き方、そしてその育成のサポートなどへの対応は、後回しになっていた。

やがてアクサスは、営業予算に基づく管理という一面的な経営の限界に直面しはじめる。売り上げは順調に伸びていたが、退職者の増加が目立つようになり、2014年ごろには離職率が一時24%にものぼった。