なぜ理念やビジョンが企業経営に必要なのか

営利は大切だが、金もうけだけのために人が集う企業であれば、金の切れ目が縁の切れ目となる。これを避けるためにも、理念やビジョンは必要であり、営利活動を積み上げていくことでどのような集団となり、社会への貢献をどのように果たしていこうとしているかの共通理解を、企業は経営の節目に応じて振り返り、深めるべきである。

山の頂上へのルート
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アクサスの事業の成り立ちを考えれば、その社運は優れたエンジニア人材をどれだけ抱えることができるかにかかっている。その視点に立ち、アクサスは社内の幹部合宿などを経て、新たな企業理念として「すごい!を追求する」、そしてビジョンとして「日本でもっともエンジニアがわくわくする会社になる」を制定した。

エンジニア部門だけではなく、営業部門も管理部門も、全社をあげて「エンジニアがわくわくする会社」を実現するために「すごい!を追求する」ことに邁進まいしんする。そんな会社となっていこうというのが、アクサスの現在の理念であり、ビジョンである。

「経営の数字」を納得するための共有基盤

理念やビジョンは第一に、組織のメンバーの共感を得られるものでなければならない。第二に理念やビジョンは、客観的で数量的な評価のためのものではなく、質的で抽象度の高いものがよい。なぜなら理念やビジョンの役割は、予算目標などの経営の数字の妥当性を、組織のメンバーが判断し、納得するための共有基盤を、その数字の外部に確保することだからである(神戸大学専門職大学院[MBA]『プレMBAの知的武装』中央経済社、2021年、p. 206-211)。

例えば現在のアクサスでは、「この目標数字は、『日本でもっともエンジニアがわくわくする会社になる』ためには過小なのか過剰なのか」と、各種のKPIを折に触れて見直す機会がビルトインされている。さらに理念やビジョンは、営利面の数字が思わしくなく、組織が空中分解しそうな時期を、共同体としての絆によって乗り切っていくための命綱ともなる。「『すごい!を追求する』会社なのだから、社内にこんなサポート体制をつくりたい」といったかたちで、予算管理からは生まれない共同体としての組織を活性化する提案を、内発的に生み出す仕掛けともなる。