旧統一教会の二世信者は、どんな苦しみを抱えているのか。実母の入信をきっかけに自身も高校生で入信した冠木結心さんは、合同結婚式で韓国人男性と結ばれた。夫となる人と初めて会ったときには「こんな素敵な人を与えられた私は世界一幸せだ」と思ったが、相手は「日本人と結婚できる」という勧誘につられて入会しただけの男性だった。冠木さんが結婚生活を前に抱いた不安とは――。(前編/全2回)

※本稿は、冠木結心『カルトの花嫁 宗教二世 洗脳から抜け出すまでの20年』(合同出版)の一部を再編集したものです。

旧統一教会主催の合同結婚式に出席するカップルたち
写真=AFP/時事通信フォト
2020年2月7日、加平の清心平和ワールドセンターで旧統一教会主催の合同結婚式に出席するカップルたち

合同結婚式の会場で伴侶と初めて会ったときの高揚感

1995年8月25日。ソウルオリンピックスタジアムでは、〈36万双合同結婚式〉が挙行されました。

前日に〈約婚式(※)〉があり、翌日が合同結婚式です。日本全国から集められた大勢の日本人女性、フィリピンやタイ、台湾や欧米から来ている外国人女性も見受けられました。皆、明日将来の伴侶となる人と初めて出会うのです。私の胸も高鳴っていました。

※聖酒式ともいう。この式がなければ原罪を脱ぎ、神の血統に転換することはできないとされている。「(聖酒には)父母の愛の象徴が入っている。血が入っていないといけない」と教祖は語っていたが、実際は3種類の酒と21種類の薬草で作られている。

約婚式の会場へ向かうと、バスの前に何人かの男性たちが立っているのが見えました。その中に写真でしか知らなかった自分の「理想相対(理想世界に共に行く永遠の伴侶)」が動いているのを見た時の、あのうれしさと高揚感は言葉では言い表せません。実際に会った彼は、背が高くてカッコよく、私には過分な相手だとさえ思いました。

「こんな素敵な人を与えられた私は、世界で1番幸せだ」、そう思った初対面の瞬間でした。