一人で生きるためにチラシを見て統一教会に転がり込んだ

19歳という若さで結婚を選んだ彼には、事情があるようでした。小学生の頃に両親が離婚し、弟は父親と生活していましたが、彼は一人で生きる道を選びました。新聞配達をしながら、何とかお金を稼いでいたようです。ですから、まともに学校にも通えずに中学中退となったのです。そんな理由から、兵役も免除されました(※)

※韓国には徴兵制度があり、満20〜28歳の男性に兵役義務が課される。入隊期間は時代によって違うが現在は1年半。学歴、身体、家庭事情など4段階の兵役判定が行われる。ただし、病気や心身障害のある場合や、本人がいないと家族が生計を立てられない場合、孤児、体格的に不適当とされる場合、性転換した場合は兵役が免除される。ほか高卒未満の学歴の場合、犯罪歴のある場合なども、兵役に就けないことがある。

友達の家を転々として生活していた18歳の時、彼はチラシを見て統一教会に転がり込んできたそうです。当時の彼は、まるで孤児のようだったと当時の教会長から聞かされたことがあります。なかなか人を信用しなかったり、少しひねくれたことを言う人でしたが、それも彼の生い立ちが関係しているのではないかと思われました。

日本人女性と結婚できればそれでいい

「統一教会に入会すると日本人と結婚できる」と知り、彼は合同結婚式に参加したのです。韓国の統一教会では、信仰よりも結婚を前面に出して伝道しています。結婚の機会のなかった男性たちは、結婚をちらつかされ、入会を勧められていたのです。教会の担当者からすれば、36万組の合同結婚式を成功させるために、手段を選んでいられなかったのでしょう。

冠木結心『カルトの花嫁 宗教二世 洗脳から抜け出すまでの20年』(合同出版)
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特に韓国では「日本人女性はよく働く」と言われていました。自分で相手を見つける努力をしなくても「理想の相手」を選んでもらえるし、自前で結婚するよりもずっと安い費用で嫁がもらえるという、これ以上にない機会でした。数合わせのため、ただ結婚目的で集められた男性たちは、とりあえず教義を信じたフリをして合同結婚式を済ませれば、それでジ・エンドなのです。そんな事実を、私はだいぶ後になってから知りました。

また文鮮明は「(日本人には、)選民であるうら若き韓国の乙女を従軍慰安婦として苦しめた過去の罪があるため、韓国の乞食と結婚させられたとしても感謝しなければならない(※)」と言っていました。私にとって、この教祖の言葉は深く刻まれていました。なぜなら、私の相手がまさに、そうした人物だったからです。

※侮蔑語を含むが、文鮮明の表現をそのまま掲載した。