高級時計のお返しは統一教会の記念品だった

約婚式には、お互いの準備したプレゼントを交換する時間がありました。互いのプレゼントは偶然にもペアウォッチでした。私は少し奮発して、デパートの時計売り場で買った日本の高級時計ブランドのダイバーズウォッチを準備しました。

一方、彼がくれた時計は韓国の統一教会が一連の「世界文化体育大典(※)」の記念に製作したもので、時計盤には大きな大会のロゴマークが入り、イミテーションのダイヤがギラギラと散りばめられた趣味の悪い腕時計でした。せっかくもらった時計でしたが、どこに着けて行くにもためらわれ、イミテーションのダイヤもすぐに取れてしまい、結局一度も身に着けることはありませんでした。ちなみに、私が買った腕時計は、25年以上たった今も正確に時を刻み続けています。

※科学者による科学統一会議、世界言論人会議、世界平和サミット会議、世界宗教議会、世界平和女性連合、原理研究会、世界平和教授協議会、ハンマダン体育祝典など、世界の英知が結集する文化大典とされ、そのメインイベントが国際合同祝福結婚式であった。

一夜明け、ソウルオリンピックスタジアムで行われる36万組の合同結婚式当日になりました。朝から自分で化粧をして、真っ白なウエディングドレスに着替えると、準備されたバスに乗り込みスタジアムへと向かいます。ものすごい人の数、そのうえ、みな同じような格好をしているので、当日相手を探すのはとても困難です。私と彼は、約婚式の後にスタジアムのどこで待ち合わせをするのか決めておきました。

結婚式のイメージ
写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです

待ち合わせ場所に彼がいない…違和感はここから始まった

当日は朝からあいにくの雨模様。ウエディングドレスの上にビニールのレインコートを着て待ち合わせ場所に向かいました。待ち合わせ場所に着く頃には、ウエディングドレスの裾は泥だらけになっていました。彼の姿はまだ見えません。しばらく待ち合わせ場所でずっと待っていましたが、待てど暮らせど彼は現れません。

もう式が始まってしまいます。焦った私は、彼の所属する教会の人たちが座っているエリアを調べて、直接探しに向かいました。すると、そこに彼が座っているではありませんか。私を見て驚く様子も、謝る様子もありません。待ち合わせなど最初からなかったかのように、そこに座っていました。そんな彼を見て、私は内心とても悲しくなりました。

「本当は、彼は私と結婚することを良く思っていないのではないだろうか……」

違和感と不安を抱きながら、合同結婚式は始まりました。

朝からスタジアムに降っていた雨は、教祖夫婦が登壇した途端にぴたりと止みました。

「スゴイ! 御父母様(文鮮明夫婦の教会内での愛称)が来られた途端に雨が止むなんて!」

ところどころから人々の感嘆の声が聞こえてきます。

「万歳〜! 万歳〜! 万歳〜!」

震天動地。式の最後に会場中に万歳の声が響き渡り、合同結婚式は幕を閉じたのでした。