イノベーションを起こすのはメーカーではない

花王のファンテックのように、外部企業と協業することで「自前主義」から脱し、新たな視点の商品開発につなげていく「オープンイノベーション」は、03年、ハーバード大学経営大学院(当時)のヘンリー・チェスブロウ教授によって提唱された概念です。

【図表1】チェスブロウによるオープンイノベーションの定義
Henry Chesbrough『Open Innovation』[2003]を基に作成

チェスブロウは著書(『Open Innovation』)において、オープンイノベーションの大きなポイントを、

◆内部と外部の技術やアイデアなど「資源」の流出入を活用すること
◆結果として「組織内」で創出したイノベーションを「組織外」に展開する市場機会を増やすこと……

などとしています。

日本でも、花王以外の事例として、ソニーのアクセラレーションプログラム「Sony Startup Acceleration Program」や、ソフトバンクのビジネスパートナープログラム「ONE SHIP」、トヨタが外部5社と協業する「TOYOTA NEXT」などが知られています。

一般には、イノベーションを創るのは「メーカー(組織)」だと考える人も多い。ですが、それは「してはいけない誤解」だと、先の寺田さん。そのうえでこう言います。

「イノベーションを創造するのは、『お客さま(消費者)』のほう。われわれメーカーは、自社の研究開発とお客さま一人ひとりが望むものとの接点を知り、それがビジネスとして成立し得る可能性を、デジタルによって探るのが務めだと考えています」

予想以上の“熱狂”につながった

花王の社内では、今回のへそごまパックの成功を、予想以上の“熱狂”を呼べた点にあるとみています。

今後発売する商品については、へそごまパックも含めて検討中だそうですが、「今回、外部と共同で行ったデータ収集・分析の仕組みを、次回はさらに磨いていきたい」とのこと。

近い将来、「おへそ博士」のような、ひたむきな研究員の努力とアイデアが、一定の成果を上げられるか否か。それは、こうした思い切った組織改革や成功事例の積み重ねによって、社内の研究員のクリエイティビティや意欲を刺激し続けることができるかどうか、にかかっていそうです。

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