ほぼ日手帳が国境を超えて愛される理由
「ほぼ日手帳」は、コピーライターの糸井重里氏が代表を務める「株式会社ほぼ日」の看板商品だ。最大の特徴は「1日1ページ」という構成。このためスケジュールの一覧管理は苦手だが、日記のように日々の出来事をたっぷり書き込むことができる。
価格は本体とカバーのセットで約5000円から。「手帳」というジャンルでは高額の商品となるが、デザインと素材に細部までこだわったユニークな商品づくりが強く支持され、2001年の誕生以来、着々と売り上げを伸ばしてきた。今では週間手帳などラインナップも大幅に増やし、2022年版は156の国や地域で、72万部を売り上げたという。
ほぼ日の管理部長の鈴木基男さんは「使い方の自由さが評価されてきた」と話す。
「ほぼ日手帳は、持つ人それぞれが用途や目的に応じて自由に使える手帳です。そのため、日々新しい使い方が生まれていて、『こんな使い方ができて便利だよ』という形で家族や友人、知人に勧めたくなるのです。最初から使い方が決まっているのではなく、ある種ユーザーに裁量が委ねられ、自由にのびのびと使えるのが魅力だと思います」
とりわけ最近は海外市場での伸びが著しい。鈴木さんは「発売当初から海外から注文があり、それに地道に応えてきた」という。
「ほぼ日手帳を販売する自社ECサイトでは、1年目の2001年から海外からも注文が来るようになりました。海外発送のノウハウもなく、手探り状態でしたが、拒むことなく真摯に海外のお客様からの注文に応え、商品を送っていました。今では世界中に愛用者が広がりましたが、ここから始まったと思います」
マーケティングよりも「お客様が喜んでもらえるか」を重視
2012年にはほぼ日手帳の英語版「Planner」(A6サイズ)を発売した。
この商品を発売するにあたって、主だったマーケット分析やマーケティング施策を行っていない。もともとは「英語で書かれている手帳を持っていれば、かっこいいと感じてくれる方もいるのでは」という考えが起点になっているそうだ。
「ターゲット層を決め、そこから使い方を想定し、訴求ポイントを考えて……といったいわゆるマーケティング的な市場調査は行わず、採算性を意識するよりも『いかにお客様が喜んでくれるか』から考えることを重視しています」(鈴木さん)
他社商品の研究はしないのか。鈴木さんは「世の中に類似する商品があれば再現性を検証できますが、それが全くない新商品であれば検証ができません。ですから、すごく良いアイデアが出た際は、まずそれを形にします」と述べる。
まずは世の中に商品を出し、ユーザーのリアクションを見ながら、商品を改良していく姿勢を大事にしているという。