客単価だけでは測れない“儲け”

高級フレンチレストランvsお好み焼き屋
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高級フレンチレストランvsお好み焼き屋

フレンチレストランと粉モノ屋、新しく店を開くなら「つぶれにくい」のはどちらか? ビジネス書が溢れる今、粉モノ屋と正答できる人は多いだろう。では、その理由は? 本稿ではそれをおさらいしたいと思う。

キーワードは“期待値”と“損益分岐点”。例えば、500円のお好み焼き屋と1人2万円の高級フレンチレストランとで、お店に行くときの期待値はどちらが大きいか、その消費者心理を比較してみよう。

500円のお好み焼き屋の場合、食器がたとえ100円ショップの商品であっても、お客は「安っぽいな」などと腹を立てはしないだろう。大衆的なお好み焼き屋で油が染み込んだ壁面や黒光りした鉄板を見ても、もともと高級感を期待していない、つまり“期待値”が低いお客は「(支払う金額と比べて)損をした」などと憤慨はしないだろう。

それよりも500円に見合う、もしくはそれ以上の味わいとサービスであれば、少なくとも不満に感じることはないだろう。誤解を恐れずに言えば、店側は清掃コストを削減してもさほど問題はないことになる。

一方、1人2万円の高級フレンチレストランでは、料理の素材はもちろん皿やグラス、店に置く調度品までも、料理の値段にマッチしたグレードのものでなければ、お客は不満を抱くことになる。「2万円もするのだから」という“期待値”が高いために、料理だけでなく、食事をする環境も値段相応の水準でなければ到底満足できない。だから店側は、お客が来ても来なくても、店を開けている以上は清掃や内外装のメンテナンスコストも負担し続ける必要がある。

つまり、お好み焼き屋はローコストで売り上げを確保するチャンスがあり、フレンチレストランはコストをかけなければ売り上げの維持・拡大が難しいといえるのだ。だからいざ開業を考えた場合、お好み焼き屋はイニシャルコスト(初期投資)を抑え、スピーディーに投資資金を回収できる。しかし、フレンチレストランは商品単価に見合った皿、調度品が必須のため、イニシャルコストが上昇し、資金回収にも時間がかかるのである。