なぜ日韓関係はこじれてしまったのか。駐ミクロネシア連邦大使で過去に在韓国大使館総括公使を務めた道上尚史さんは「韓国社会では『K-POPが好きな日本人は韓国全体が好きなはず』と考えられており、自分たちに問題があるという発想があまりない。日本にも留意すべき点もあるが、私の知る日韓関係を振り返ると、特にこの10年間は韓国の側の問題が大きい」という――。(第2回)
※本稿は、道上尚史『韓国の変化 日本の選択 外交官が見た日韓のズレ』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。
「韓国ほど日本を小さく見る国はない」と語る記者
最近の韓国の日本観はどんなものであるか、私の勤務地ソウル・釜山(プサン)での体験をベースに述べていきたい。8年前のソウルで会った、日本通の知人二人に登場願おう。
まず、日本をよく知る記者は次のように語った。
「韓国ほど日本を低く小さく見る国はない。世界で韓国だけが、日本の国力の大きさを知らない。新聞社の東京特派員をした自分は日本の底力、裾野の広さを知っているし、世界各国で日本への評価が高いことを知っているが、一般の韓国人はこれを知らない。日本人が言っても耳を傾けない」
「日本へのコンプレックスのため日本を実際以上に大きく高く見過ぎ日本に譲歩してきた。韓国は強くなったので屈辱を改めよう。今や自分たちは反日でなく、コンプレックスもなく、合理的な日本観だ――多くの人はこう思っており、こういう自己正当化の心理が働いている。でもこれは逆立ちした議論であって、かつて日本を過大評価したのでなく、現在の日本をことさらに過小評価しているのだ。その傾向自体が対日コンプレックスともいえる」