なぜ日韓関係は過去最悪となったのか。駐ミクロネシア連邦大使で過去に在韓国大使館総括公使を務めた道上尚史さんは「日韓双方に、『根拠なき楽観論』と『無視論』が蔓延しているからだ。この四半世紀の変化の本質をどちらも把握できていない」という――。(第1回)

※本稿は、道上尚史『韓国の変化 日本の選択 外交官が見た日韓のズレ』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。

日韓貿易戦争のイメージ
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多くの日本国民の心が韓国から離れたのはなぜか

80年代以降、韓国は目覚ましく発展した。巨大だった国力差が少しずつ縮まり、韓国の日本観が変化してきたのは自然なことだ。日本人はそれが悔しい、腹立たしいからと、いわば感情論で「韓国はおかしい」と思ったわけではない。では、多くの日本国民の心が韓国から離れたのはなぜか。日本は韓国の何に気づいたのだろうか。

第一に、外交安保についての韓国・韓国民のめざす基本方向だろう。政府の公式見解でないにせよ、中韓が連携して日本を牽制けんせいすべしとの意見、米国と中国を天秤にかけホンネでは後者に傾斜しがちなこと、北の核実験等への無関心を、日本国民は知るようになった。

第二に、国と国との約束を守らない、国際社会の常識的なマナー(皇室に対してさえ)に反する言動が繰り返されるとして、韓国への信頼関係が大きく低下し、「国どうしでよい友達になれる相手ではない」との認識が広まってしまったことだろう。韓国をリスペクトし交流に熱心だった経済人、一般市民のショックが大きいし、熱心な韓流ドラマファンからも同じ声を聞くようになった。

第三に、これらについての韓国側の自省が薄れてきたことだろう(20年前はあった)。日本を「帝国主義の亡霊、残滓ざんし」と言うなど、世界でも突出した異様な日本観を耳にすることが増えた。かつては韓国国内でもブレーキがかかったのだが、近年は違う。

以上の3点を、一部専門家でなく日本国民の広範な層が気づいたのだ。