「放っておけ」「何を言っても無駄」という無視論

「根拠なき楽観論」の次には、「放っておけ」という「無視論」だ。

韓国の一部に「日本は影響力のない国。関係改善の努力は必要ない」という発想がある。韓国の国益を損なってもいるし、多くの韓国の方が建前上は否定するが、存在する。「関係改善をしたいが、日本が応じないのだ」という論法も同様である。日本では「日本が何を言っても無駄。韓国自身が目を覚ますまで待つほかない」との意見が増えている。

日韓の「無視論」は、中身は反対なのだが、「放っておこう」という点で共通している。以上、日韓ともほぼあらゆる場が、「根拠なき楽観論」、「無視論」いずれかの砦で占められたかのように私は感じる。

別の角度からはこう言えようか。まじめに、筋道立てて考える日本人にとって、昨今の韓国は理解を超えており、困惑している。韓国で、日本の国柄も世界での役割も理解せずに「日本をよく知っている」と錯覚し、日本を一刀両断すればいいと思っている韓国人は、現状に特段の痛痒つうようを感じていない。根拠のない楽観論あるいは無視・放っておけ論でいればよいだけだ。

ますます日米韓の連携は重要になってきているが…

正直、これほどまでに絡み合った事態の打開は容易ではない。ただ、確実なことが二つある。

一つは、日本にとっての韓国の重要性だ。安保、経済、中国、北朝鮮、米国と西太平洋、インド太平洋。どれをとっても韓国は非常に重要だ。今世紀初頭よりは良くない方向に来ている。日本がこれを放置し、ないし根拠薄弱な楽観論に身をゆだねていては、事態は一層悪くなる。中国台頭、ロシアのウクライナ侵略の中、日韓や日米韓連携はますます重要だ。

地図上の日中韓周辺
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1980年代初めに駐韓大使と外務事務次官を務めた須之部すのべ量三りょうぞう氏は、よくこう話していた。

「日本の対外関係は、いつも韓国との関係から始まる。古代も明治初期もそうだった。日本が韓国とうまくやっていけるかは、日本外交がうまくやっていけるかのバロメータになる。韓国との関係は難易度の高いことなのだがね」

もう一つは、本書(『韓国の変化 日本の選択 外交官が見た日韓のズレ』)で私が書いた程度の、韓国ないし日韓についての分析は、日本の外交や国益を考えるのに必要な基礎知識だと思うが、それさえ十分にシェアされていないことだ。不遜ふそんな言い方だが、相手を把握せずしては、一人相撲になるだけだ。周辺的なことに時間とエネルギーを費やすのでなく、しっかりした分析の上に半歩でも前に進めたい。